続いて、同じく内藤の「遠野物語」です。初版は1983年。
冒頭には吉本隆明の論説「遠野物語別考」が寄稿されています。
写真集部分は、「生者の章」、「死者の章」、「神々の章」の三段構成になっていて、それぞれ「実際の遠野郷の風景と、村人の様子」、「お寺に奉納された肖像画・写真」、「神仏像」が被写体になっています。
一番興味を惹くのは、「生者の章」でしょう。
手法としてはストロボの多用。
闇の中から老婆の顔が浮かび上がる様は、さながら海の底でチョウチンアンコウに出会ったようです。
妖しい世界の演出に欠くべからざる役割を果たしています。
本人も大いに自覚していたようで、あとがきでは、『写真の表現として、意識的かつ集中的にストロボを使用したのは私が世界で最初である』と胸を反らしています。
わたしはストロボを持っていないので、いつも自然光で撮ってきましたが、その可能性に目を開かされました。
巻末はお馴染み、考察ノートです。先生どうしてすぐ考察してしまうん……。
しかし先の「東京」ほどのオカルティズムはなく、大人しめです。結構面白く読めました。