RE:浜名湖

 鷲津駅には六時半頃到着しました。全身汗だくで、息も上がっています。
 自転車を駅の駐輪場においてホームに向かいます。朝食事をしてからいままで何も口にしていなかったので、激しい空腹を覚えました。キヨスクでツナマヨネーズ味のランチパックとヨーグルト味のチェルシーを買い、上りを待っている間に食べました。こんなに美味いチェルシーがあっていいものでしょうか。
 そのうち電車がやってきて、二十分ほどで浜松に到着しました。
 わたしにとってはこれが初めての浜松訪問でした。しかしあまり感慨にも浸ってはいられません。もう日が落ちています。北口を出て地図を確認し、まずは東横インを当たってみました。ところが、というかやはりというか、空き室はありませんでした。GWに予約もせずに泊まろうとするのは無謀すぎたか……。
 最悪サウナを覚悟して、電車から見えた「浜松健康センター・バーデンバーデン」の方に足を向けます。
 JR沿いを歩いていると「かじ町プラザ」というビルが右手に見えてきました。そこに「ホテルセンチュリーイン浜松」の文字が。ダメ元で飛び込んでみるとなんとシングル空いていました。値段も安い、六千円! 地獄に仏の気分でした。ただこのビルちょっと奇妙で、開いているのは6Fのホテルのあるワンフロアのみ。残りのフロアにはエレベーターも停まらず死んだような静けさでした。
 キーを受け取り部屋に入ると、ひ広いッ! 首都圏のホテルのビジネスホテルの狭さに慣れた身にはシングルとは思えぬ広さに映りました。早速熱いシャワーを浴びます。これは至福の瞬間でした。頭を洗うと髪から塩臭い匂いがしたので笑ってしまいました。
 汗の染み込んだ衣類はホテルのコインランドリーで洗いました。乾燥機で乾かしている間、NHKの「日曜美術館」を何年かぶりに見て時間を潰します。北斎の特集でした。キャスター、姜尚中になってたんだ……。
 服が乾くともう十時近くになってしまっていたのですが、お腹が空いてどうしようも無かったので夜の街に出ます。有名なうなぎでも、と思ったのですが夜遅すぎてやってませんでした。空いているのはどこも飲み屋のような所ばかりだったので、仕方なくすき家で炭火やきとり丼を食べて済ませました。
 それにしても法被を来てる人が目につきました。明日から浜松まつりの会期だそうで、その前夜祭だったのでしょうね。
 ホテルに戻りすぐに就寝します。今日はノンアルコールです。

RE:浜名湖

 しかしなんということでしょう、すでに門が閉ざされ人影は無くなっていました。そこにはショックな掲示が。ななななんと、三ヶ日のターミナルは営業は四時までだというのです。渚園で貰ったパンフレットには営業時間のことなど何も書いていません。それならどこも同じ営業時間だろうと考えて当然じゃないですか?!
 わたしはなんとか取り繋いでもらうべく隣接する駅の窓口に向かいました。しかしさらなるショックが待っていました。駅の窓口も四時に閉まってしまっていたのです。
 助けを求めて、渚園のターミナルに連絡を入れました。担当のおじさんも三ヶ日が四時に閉まることは知らなかったらしく驚いていましたが、それなら気賀に返すように言われました。うふふ無理。ここから気賀まではゆうに一時間以上かかり到底まにあう筈がありません。それでも一応連絡してみることにして、気賀に電話を入れます。
 『おかけになった電話番号は現在使われておりません』
 なんだそりゃ?
 おじさんに気賀に繋がらないことを伝えると、ならば待っててやるから渚園まで戻ってこいと心温まる提案をしてくれました。渚園からここまで四時間以上かかっています。今から戻っても着くのは夜九時。そのことを告げると「万策尽きた」という感じで唸るのみでした。そこで明日返しに行ってはどうかと提案すると「しょうがねぇな」という感じで了解してもらえました。
 とは言ったものの、これからどうするのか、明日返しに行くとして今日はどこに泊まるのかノーアイディアでした。
 しばし地図とにらめっこして策を練ります。考えた末、このまま浜名湖の西の海岸沿いを下って東海道本線の鷲津駅まで行き、自転車はいったんそこに置いておくことに決めました。そして電車で浜松まで出ればどこか泊る場所が見つかるに違いありません。
 そうと決まればぐずぐずしてはいられない。もう日も暮れかかっています。わたしは鷲津を目指してひた走りはじめました。とにかく暗くなる前に着こうと必死だったので、ここから先の道のことは細かくは覚えていません。いくつか風景を挙げるなら、浜名湖レークサイドプラザの作り物じみたリゾートや、尾奈駅の空虚さ、三〇一号沿いの大きな写真を掲げたカラオケ店などが印象に残っています。なんだか華やかな東岸に比べるとうら寂しい感じがしました。

RE:浜名湖

 気賀駅そばから都田川沿いに進みます。引佐細江から奥浜名湖沿いの道に乗ります。中国浙江省友好記念公園の前を通過して、西気賀のあたりから天竜浜名湖線と並走します。寸座海岸を回って、急坂を登り、浜名湖サービスエリアを眼下に眺めます。
 わたしはここでもう時間がないので、海岸線沿いに進むのを諦めて東名沿いに進むことに決めました。浜名湖佐久米を過ぎた付近で海岸線とはお別れです。都筑海岸、走ってみたかったですが泣く泣く諦めました。
 東名沿いにしばらく進み、東海プラスチック工場の付近で鉄道沿いに進路を切ります。都筑駅を過ぎると猪鼻湖が見えてきました。時刻は四時を少し回ったくらいでした。三ヶ日まではもう目と鼻の先。勝利(?)を確信したわたしは海岸通りに降り、津々崎を眺めながらペダルを漕ぎました。
 ちょっと行くと、背の高い椰子の木に囲まれた三ヶ日中学校が見えてきます。この角で九〇度曲がって三ヶ日駅に至りました。
 
 駅に着いたのは四時四十五分ごろでした。際どかったが間に合ったとほっと胸をなで下ろし、レンタサイクルターミナルに向かいました。

RE:浜名湖

 浜名湖ベイストリートを走ります。途中、浜松市動物園の前を通過しました。その先には廃ホテルが……。
 この辺で常に左手に見えていた湖が見えなくなってしまいます。東名高速道路を越えて、奥浜名湖に到るまでお別れです。
 呉松川を超えたところで道はふたつに分かれます。ここで痛恨の事態が。本当は左に曲がらねばならないものを、右に曲がってしまったのです。微かに違和感を感じたものの、しばらくすると東名のガードが現れたためそのまま先に進んでしまいました。しかし行けども行けども湖は見えてこない。はっきり迷ったことに気がついたときには、もう引き返せない場所にいました。周囲は畑です。
 手元には浜名湖の周囲の地図しかなく、どうやらその外に出てしまったようです。途方に暮れたわたしは、とりあえず気分を落ち着かせるため自販機でチェリオのライフガードを買ってあがった息を整えました。
 (余談ですが、ライフガードには「超生命体飲料」という名が冠してあります。「超生命体飲料」とは一体何なのでしょうかね? わたしの知る限り、他に「超生命体」を標榜するものは「超生命体トランスフォーマー」くらいのものですが)
 そこからは手探り状態でした。長いこと息を切らしてやっと「気賀」の標識を見つけた時にはほっとしました。
 しかし安心してばかりはいられません。時刻はもう三時を回っています。舘山寺を出て一時間半が経過していました。これははっきりいって大誤算。各地のターミナルは五時には閉まります。このまま予定通り三ヶ日を目指すのか、あるいは気賀でリタイアするか、究極の選択を迫られました。迷ったものの、わたしは行くことに決めました。

RE:浜名湖

 渚園はレジャーセンターで、野球場、テニスコート、キャンプ場などの施設があります。広大な駐車場を備えているのですが、今日は超満車で、なにか駐車区画でないところにまで停めていました。
 受付で自転車をお願いすると、一台だけ残っていました。同着で来たカップルがいたのですが彼らには十分な台数がありませんでした。わたしは大変ラッキーなことに、最後の一台を借りられたのです。
 用紙に氏名、住所、電話番号を書き、レンタル料の五百円と、保証金千円を払い借り受けました。保証金は元のターミナルに返却すれば返ってくるのですが、別のターミナルに返すと「乗り捨て」ということで徴収されてしまいます。
 実はこの時点では乗り捨てるつもりでいました。自転車で湖を半周し、三ヶ日駅ターミナルで乗り捨て、そこから天龍浜名湖鉄道で新所原に出て、東海道線でその日のうちに名古屋に帰るという計画だったからです。
 わたしは意気揚々ママチャリを漕ぎ出しました。その時十二時半でした。
 
 渚園を出てすぐに、右手に庄内湖、左手に浜名湖を望む、浜名湖大橋に差し掛かりました。とても長く、そのうえものすごい強風だったので、荷物が吹き飛ばされるのではないかと心配でした。
 橋が終わりに近づくと、浜名湖ガーデンパークの展望台が見えてきます。パークの前を横切って村櫛海岸の長いストレートロードに入ります。ここからは眺めも道も最高で、気分爽快でした。
 しばらく走っていると庄内というちょっと陰気なところに差し掛かります。山側の鬱蒼とした林が道路に迫っていて、ワイルドな雰囲気です。それから、自転車道と湖面の高さが近いのか、波しぶきがバシャバシャと打ち寄せてきて道路を濡らしていました。強い磯の香りが鼻を突きました。
 この辺りから舘山寺温泉の建物群が見えてきます。まるで湖の中に建つお城のようで、かなり感動しました。舘山寺に付いて、ちょっとホテルやお土産物屋の周りをうろうろした後、湖岸沿いに浜名湖パルパルという遊園地の裏を回ります。ここの道はかなり狭いです。落ちやしないかと冷や冷やしました。
 大草山をバックに、観覧船が通っているのが見えました。今回は見るだけでしたが、またの機会があればぜひとも乗ってみたいですね。

浜名湖

 5月2日から3日にかけて、浜名湖一周の旅に出てきました。
 普段は新幹線で通過してしまうだけの場所だったのですが、車窓からの美しい湖の眺めに前々からあこがれてたのです。
 2日の早朝、わたしは突如として思い立ち浜名湖一周プランを立てました。スタート地点は東海道本線の豊橋と浜松の間にある弁天島駅です。
 
 その日の正午に弁天島に到着しました。天気は快晴。さわやかな風吹く、絶好の行楽日和でした。
 ここは浜名湖の河口からちょっと北にある埋立地で、国道一号沿いにはホテルや食事処などが並んでいます。
 湖の周りにはいくつかレンタサイクルのターミナルが設けてあって、弁天島にもあります。そこで自転車を借りて回ろうと考えたわけです。
 大鳥居が見える海岸へ降りますと、ものすごい人です。潮干狩りを楽しむ家族連れでした。
 レンタサイクル店を見つけ、受付のおばさんに自転車を借りたい旨を伝えます。ところがぎっちょん、自転車はすべて借りられてしまいもうないとのこと。確実に借りるためには予約が必要だったそうです。すべて出てしまうことは珍しいのだそうですが、やはりGWですかね。
 おばさんに渚園という埋立地北部のターミナルに行けばあるかも知れないと教えられたのでそこへ向かいました。途中には釣具屋、貸し船屋、しらすやうなぎなどを売る物産店が点在しています。細い通りは車でごった返していました。

RE:DIY

 実を言うとこれはジュースをアルコール発酵させようという試みでした。
 ネットの世界で静かに流行っているのです。興味のある方は「猿酒」でググってみでください。
 
 一週間放置するとグレープジュースはワイン風の飲み物に醸し上がります。
 発泡性にしたかったので、「プライミングシュガー」という少量の砂糖(水に溶けやすいものが良いのでわたしはヨーグルトに付いているやつを使った)を加えて瓶に詰め、もう二三日寝かせます。
 あとは冷やして飲む!
 
 自分で作ったという贔屓目もあるのでしょうが、意外といけます。
 アルコール分はビール以上ワイン以下といったところでしょうか。
 ただドライイーストを使ったので、パン臭があります。ワイン用のイースト(東急ハンズに売っているらしい)を使うと匂いが無くて良いそうです。
 ああ、試したい。危険な道に嵌ったかな?

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ハイマチックF

 ヤフーオークションで落札した、セミクラシックなフィルムカメラ「ミノルタ・ハイマチックF」が届きました。
 前のオーナーさん、よっぽど大事に使ってらしたのでしょう。四十年くらい前のモデルにも関わらず、とてもキレイです。性能も問題ないようです。
 
 大衆機とはいえ、二千円くらいで落札できてラッキーでした。
 ヤシカの二眼レフと比べると軽く(350g)、便利(フィルム送りとシャッターの連動、自動露出)で使いやすいです。
 
 いくつか作例をアップします。
 実は現像に失敗してしまい、救えたものの中から、ということです。
 モノクロだと荒くコントラストの強い、日向っぽい絵になるようです。

西アサヒ

 ついにGWはじまりましたね。
 しかしわたしは特にどこにも行く予定がなかったので、名古屋駅近くのビックカメラに足を運びました。
 写真用具をいくつか買った後、特に目的もなくぶらぶらしたのですが、道中ですごいレトロな喫茶店を発見しました。
 普段はあまり喫茶店などには入らないのですが、そのひなびた風情に引き寄せられて門をくぐってしまいました。
 家に帰ってからネットで店名を検索してみますと、けっこうヒットしました。やはりそのレトロさ(戦前からあるとも言われる)とB級グルメが話題になっていました。
 そこでわたしもいっちょレビューしたいと思います。
 
 店の名は「西アサヒ」
 西区那古野にある円頓寺商店街の中にあります。
 名古屋駅の桜通口からまっすぐ五百メートルほど進みますと、高速と交わる十字路に突き当たります。そこで左手に折れ、名古屋国際センタービルの前を通って、高架沿いに六百メートルほど進むと右手に「円頓寺」と書かれたアーケードが見えてくるはずです。
 県道200号と接続する明道寺交差点まで行ってしまうと行き過ぎなので戻りましょう。
 
 店もそうなのですが、この商店街自体がかなり古く時代の断層を感じます。しかし人通りはそこそこあり、活気を感じました。
 今日は何か特別な日だったのか、アーケードの中で中学生たちがブラスバンドの演奏をしていました。
 
 最初にこの古ぼけたサンルーフが目に入ったとき、二三歩後ずさったかと思います。濃密な昭和の雰囲気に圧倒されました。非常に心惹かれるものを感じましたが、同時に「一見さん」を頑なに拒む門のようにも思われたのは確かです。
 しかしわたしは垣間見たのです、店の奥にお社のようなものが祀られているのを。
 
 好奇心に抗うことは出来ませんでした。
 入口は吹き抜けになっており、往時はモダンだったのでしょうが、圧倒的な時間の堆積が古臭さを感じさせる意匠に変えてしまっています。
 頭上にはブラウン管テレビが据えられプロ野球のデイゲームを流していました。
 入口のすぐそばのケースの中にはレジンでできたパフェが置かれ、その退色の具合がいまや決して提供されることがないことを物語ります。
 その上には変なミシュランマンの置物。
 
 マスターと思しきおじさんに促されて、例のお社のある中庭からボックス二つ分離れた席に腰をおろします。
 すぐにウェイトレスのおばさんが注文を取りにやってきました。
 しかしメニュー表が無い。要求すると出してくれました。タマゴサンドが700円、コーヒー350円。う〜ん、ある程度は覚悟していたとはいえ高くないでしょうかコレ? しかし席に座ってしまったからには仕様がありません。タマゴサンドとアイスコーヒーをオーダーしました。
 
 料理を待っている間にじっくりと店内を観察させてもらいました。
 お客はみな常連と見え、野球中継を見たり、黙々と食事をする姿は店の調度と完全に溶け合っていました。
 老朽化が目に見えて進んでいて、天井のパネルは隙間が目立ち、なんだか今にも剥げそう……。起毛のソファーは色あせ、だいぶくたびれています。置かれているガスヒーターはびっくりするほど古いデザインで、熱とともに一酸化炭素までも放出するのではないかと心配になりました。
 おもむろにカウンターに目を向けると、ふたりのおばあさんがオーダーを受けて料理を作っていました。
 後ろの棚にはダルマや高級酒の瓶が陳列され、ブランデーグラスが並べてあるなど飲み屋の風情でした。もしかしたら昔はスナックか何かで途中でカフェに鞍替えしたのかも知れません。
 雑誌は新しいものが十種類くらい。新聞も中日新聞が用意され、近隣住人の情報収集の場としての機能を果たしているようです。
 本棚も古ぼけてなかば壊れているのですが、北斎などの大型の美術書が置かれているのが目を引きます。
 こんなデカイもの開いて観る人はいないと思うのですが、ディスプレイでしょうか?
 それからなぜか荒木経惟や遠藤正といった作家のヌード写真集がたくさんありました(辺見マリとか松坂慶子とか)
 わたしの後ろに座っていたおじさんは何冊も引き出して読み耽っていました。
 
 二十分弱くらいしてオーダーが届きました(タマゴサンドは時間がかかると言われていた)
 来て見てびっくり、なんという厚さ……。玉子焼きをそのまま挟み込んでいるのです。見た目の豪快さとは裏腹に、ふんわりとしてほのかに甘く、美味です。
 しかしというかやはりというか、淡泊な味なので飽きます。キュウリのシャッキリ感に助けられてどうにか食べ切りました。
 アイスコーヒーは普段口にしているものよりはだいぶ酸味が強かったですね。
 アイスで飲むぶんにはそのほうがいいですよね。
 
 さてこの喫茶店の最大のスペクタクルとも言える中庭。長テーブルで食事をしていた人たちが立ち上がったタイミングを見計らって撮りました。携帯で盗み撮りしたのでちとブレています。
 それにしてもなんという珍妙な光景でしょう。わたしなら日本の奇景一〇〇に推薦します。一体いかなる理由でこうなったのでしょうか? 元は料亭で、その名残であるとか? そうすると料亭→スナック→喫茶店という変遷の形跡をそのまま店内に留めている事になります。
 しかしわたしが頭を抱えていることなど与り知らぬというように、西アサヒの住民たちは新聞を繰ったり、野球中継に目を瞠ったりしているのでした。
 こうして今日も一ミリ一ミリと歴史は堆積していくのでしょうか。

GW終了

 早いもので今年のGWもあっという間に終わってしまいました。
 今年は色々な所に出掛けましたが、特に2、3日に一泊二日で行った浜名湖がメモリアルでした。
 その詳細は後々アップしたいと考えています。写真もたくさん撮りました。
 少々おまちください。
 
 画像は大須で撮ったチョウセンアサガオです。