久しぶりに高村薫の本を読みました。前回読んだのは十年以上も前の「マークスの山」になります。ただ当時から、すごい重厚な文章だなという印象は持っていました。
この「黄金を抱いて翔べ」はデビュー作だそうですが、容赦のない超精密な描写に打ちのめされます。
「大通りから数ブロック離れた豚骨ラーメンの匂いがする通り」とか、「白っぽい箱から出た赤っぽいコード」とかいう曖昧な表現は一切なく、すべてを言葉で説明尽くそうとする気迫を感じました。
作家とはここまでしなければいけないものなのかと頭が下がります。と同時に、高村薫はデビュー当時から高村薫であったということに感銘を覚えました。
ただ、物語の展開自体はけっこう単調です。とちゅう暴走族と揉めたり、左翼と揉めたり、北の工作員と揉めたりするのですが、それ自体が金塊強奪を阻むものではない。
幸田と神父の関係がこの作品の最大のミステリーだと思うのですが、それもあまり消化されないままだったような気がします。
それよりいつの間にかモモとのことのほうが大切になってしまった感じ。こっちのほうも「えぇそういうことになってたの?!」ですが。
読後の感想は、「すごいんだけど、なんか疲れた」
体力に自信のあるときに、別の作品にもトライしてみたいです。