白い灯台が小高い茂みの向こうに見えてきます。いよいよ観音崎です。レストハウスそばに自転車を停め、海岸へ向かいます。子供連れやバーベキュー客で賑やかでした。
海岸は砂浜の湾と岩場の岬とに分かれます。岩場は波に洗われてサルノコシカケそっくりの地層を縞を露わにしています。波は岩場の複雑な入江に殺到し、時折沸騰したように高い飛沫をあげます。なかなか見事な眺めでした。ただ漂着ゴミが目立つのが少々残念でした。
丘を登り灯台を目指します。一〇分ほど登ると青空をバックにすっくと屹立する観音崎灯台が眼前に現れました。入場料二〇〇円を払い螺旋階段に足を掛けます。壁には全国の灯台の写真が。降りてくる人たちと道をゆずりゆずりしつつ登り、展望台に辿り着きました。
展望台からは浦和水道が一望できます。正面に見える工場の影は木更津の臨海工業地帯でしょうか。
しとしきり見物した後、岬をあとにしました。
「温泉」タグアーカイブ
RE:三浦半島への旅
横須賀に入るとぱっと視界が開けて、明るくなったような感じがします。建物も新しく清潔な感じです。
横須賀港を望む臨海公園でしばし写真撮影。接岸した軍艦や潜水艦を見るにつけ、軍港であることが意識されます。それは道行く人々を見てもなんとなく分かります。おそらく米軍関係者だろうと思われる家族連れの姿が目に付きました。
さて、ここ汐入まで文庫を出て一時間ほどで着きました。やっぱり自転車は速いですね。
横須賀中央へと向かうにつれ、周囲の景色は繁華街に。横須賀の街、初めて足を踏み入れましたがとっても繁栄していますね。有名などぶ板通りは、アメリカ人向けの飲食店や土産物屋、不動産屋などが軒を連ねています。なんともエキゾチックな雰囲気でした。
広大な横須賀の街も県立大学付近になると息切れをはじめるようで、シャッター通りや寂しです。
とちゅう、猿島を望むうみかぜ公園に立ち寄りました。大勢の釣り客で賑わっていました。
ふたたび16号に戻ります。ソテツの立ち並ぶ馬堀海岸を進みます。しばらくすると左手に、今日の目的地のひとつである「湯楽の里」が見えてきました。海岸から道をひとつ道を隔てたところにあるので、「海が見える露天風呂」の謳い文句は間違いないものと思われます。
走水を過ぎると東京湾をぐるりと取り囲む国道16号もついに力尽き、県道209にバトンタッチします。いかにも漁村という土地で、道に面して海産物を売る店や食事処などがみられますが、いずれも粗末な作りです。それに比べて近くにある横須賀美術館のモダンなデザインが対照的でした。
三浦半島への旅
秋分を過ぎて、めっきり秋めいてまいりました。朝晩は寒さが身に染みるようです。
さて三連休の中日は好天に恵まれ、絶好の行楽日和となりました。そこで、前々から行こうと考えていた三浦半島東端、観音埼灯台へ向けて自転車旅行を決行することにしました。
実はこの旅行のきっかけとなったのは、乗り過ごして汐入まで行ってしまい、歩いて帰る羽目になったあの出来事です。あの時はひどい災難だとうんざりとした気分だったのですが、日が経つにつれ横須賀の港の美しい夜景や、田浦あたりのトンネルだらけの独特な風景が懐かしく思い出されてきたのでした。今度は日中に訪れて、ぜひ写真に収めたいものだと考えるようになっていました。
さらにもう一つ背中を押すものが。それは温泉です。
今年の四月に馬堀海岸に面して、「横須賀温泉 湯楽の里」というスーパー銭湯がオープンしたのです。どうもその泉質は絶品らしく、スパミシュランでも5つ星が付けられていました。なかなか首都圏で5つ星というのはありません。これは是非とも訪れなければと強く念じていたのです。
十一時ごろ文庫を出発しました。
青空に絹雲たなびく秋晴れです。陽射しはちょっと強いですが、風が爽やかで長袖でも暑くなりません。十六号線沿いに八景、追浜と進みます。
追浜の街を抜け、田浦に近づくにつれ、左右に法枠で固めた山肌が迫って、息苦しいような道となります。田浦の商店街も活気に乏しく、どこか陰気な雰囲気のするところです。
船越街で東芝の工場を左手に九十度のカーブを曲がり、景徳寺のそばのトンネルを通過します。
田浦教会と郵便局の並びの先にまたもトンネルがあります。しかも二又に分かれているのですが、どちらを選んでも長浦町交番前の交差点で合流するので大丈夫です。交差点を右手に折れると安針塚駅へと向かう道になります。それにしてもこの付近はトンネル銀座と呼びたいほどトンネルだらけで、しかも歩道がすれ違うのも困難なほど狭く辟易させられました。そして交番を過ぎるとふたたび道は二又に分かれ、また新たなトンネル…。
反町浴場
RE:草津温泉
とにかく何でも良いから食べるものをと、川原湯温泉の看板の方に流れていくと、入口のほど近くにお土産屋があり、その軒先で少し休ませて貰いながら、店番をしているおばあさんに話を聞いたところ、この付近にはまともな食べ物屋はなく、ハイキング客はまんじゅうを食べて飢えを凌ぐのだそうです。
それとなく友人にまんじゅう案を提案してみたところ、ここまで来てまんじゅうで我慢できるかと逆上気味だったので、白糸の滝に電話をかけて道順を訊くことにしました。しかし訊いてみてもどうも要領を得ない。「発電所」「トンネル」「雁ヶ沢」などのランドマークを教えてもらいましたが、どこかまるで別の場所のことを話しているような雰囲気です。しかし渋川方面であることは間違いなく、期待を抱きながらふたたび国道沿いを歩きはじめました。
街道からは右手に渓谷が見下ろせます。険しい谷間をエメラルドグリーンの水が乳のように泡立ちながら流れていく様は遙かなる眺めでした。ちょっと残念だったのは八ッ場ダム建設のための資材置き場やバリケードが一部風景を遮るように建てられていたことです。この辺りで思い当たっていれば良かったのですが、白糸の滝はダム完成時には水底に沈んでしまうこの付近を避けて、高台へと移動していたのです。しかしあくまでガイドが間違っているのだろうと思い込んでいたところに不幸がありました。
とちゅう小蓬莱の見晴台を経て鹿飛橋に到着。ここまでで駅から二キロほどの道のり、四〇分ほどかかっています。しかし何ともショッキングな事実が判明。そば屋があるという雁ヶ沢まではまだ半分の距離だと言うのです。
歩きづめで疲労困憊していたわたし達はついに折れました。最後に鹿飛橋からの眺めを視界に収めて、この何年か後にはダムの底に沈んでしまうという素晴らしい風景を後にしたのでした。
RE:草津温泉
ここはとにかく広い。浴室もさることながら、休憩場や食堂などを備えた総合施設となっています。料金は八百円也。
浴槽は、内風呂が三〇人くらいは入れそうな大浴場。打たせ湯を併設しています。それからサウナあり。外に出るとこれまた大きな露天風呂があり、湯滝から源泉が注がれています。これが大滝なのですが、正直「大滝」というほどの迫力はあったかどうか。まぁ看板どおりということにしておきましょう。
露天風呂は滝の足元にある滝壺型のものと、下段に流れる水路型のものとがあり、水路の方は湯が冷まされてぬるめとなっています。露天風呂は足元に注意が必要です。湯のかかる岩の表面はヌルヌルとしており、不用意に足を掛けると転倒する恐れがあります。実際わたしも友人も派手に素っ転んでしまいました。
さて露天風呂の横の階段から降りると、下に名物「合わせ湯」があります。ここには二度づつ温度の違う五つの湯船(38〜46℃)が備えてあります。温度の高い湯船と低い湯船を交互に入るという趣向が楽しめるそうです。門をくぐって入ると上の浴室とは全く違う雰囲気です。浴室は総板張り。木の柱。灯りが少なく薄暗いうえ、もうもうと湯気が立ち込めているため視界はかなり制限されます。しかしこの雰囲気はレトロで悪くないです。まさにつげ義春の世界。
適当な湯船に体を沈めます。ぬるめでしたが、上でのぼせ気味だったのでかえって都合が良い。しばらく浸かって上がりました。
休憩場でしばしごろ寝をし、湯疲れした体を労ります。休憩所の窓からは雨の中傘を差して行き交う人々の姿が見えます。
大滝乃湯を出た後、ふたたび湯畑に戻ります。すでに日は落ちていました。夜の湯畑はライトアップされ、湯けむりが幻想的にゆらめき目を奪われました。
夕食は湯畑の側の「平野屋」というそば屋で摂りました。まぁまぁの味。若干お高かったような気もしますが…。
RE:草津温泉
翌日七時起床。本日は快晴。絶好の行楽日和です。窓から見える白根山も美しい。
朝風呂に入ります。旅館の地階に浴室があり、温泉が引かれています。澄んだ湯で、硫黄の香りもしないので本当に温泉か?と疑ってしまいました。しかし舐めてみると、ピリリと酸い味がしたので間違いはありません。同じ草津の湯でも色、匂いは様々なようです。
部屋に戻ると友人は起きていたので、隣のコンビニへ行き朝食を買います。どうもコンビニも旅館と同じ家族が経営じているよう。
九時過ぎにチェックアウトし、湯畑に戻ってお土産を購入します。それから西の河原露天風呂方面に向かって歩き、温泉街を散策しました。
西の河原露天風呂は五〇〇平方メートルもの広さをもつ、まるで池のような露天風呂です。草津を代表する湯のひとつですが、今回は入りませんでした。今日は午後に立ち寄る場所があったため時間がなかったのです。
一一時ごろにバスターミナルへ戻ります。乗車開始時刻まで近くの足湯に浸かって待ちます。券売所でバスの切符とともに帰りのJRのチケットも購入しておきます。
正午ごろにバスは動き出し、短い滞在地を後にしました。
RE:草津温泉
長野原草津口に到着すると真っ先に駅の遺失物係へ向かいます。「これくらいの緑色をした杖なのですが」と告げると、なんとあるというのです。駅員さんがタグのついた一脚を出してきてくれました。約一日ぶりの再会です。なんでも長野原草津口は遺失物の集積所となっているそうで、そのお陰でこんになも早い再会が果たせたのでした。心うきうき。それからはずっと手元から放しませんでした。
ホームに降りると、高崎行きの列車はすでに到着していました。急ぎ乗り込み、ボックスを確保します。それから発車まで、しばし退屈な時間つぶしです。友人は電子ブックを覗き込んでいました。わたしは相変わらず紙の文庫本です。この時読んでいたのは、川端康成の「雪国」 雪国の舞台は越後湯沢だそうですが、ここから行くなら渋川まで戻って上越線に乗り換え、水上を経由して一時間半ほどの所ですね。
列車はたっぷり三〇分経ってから動き出しました。次の目的地は隣の川原湯温泉駅です。とはいえ温泉が目的ではありません。目的は景勝地として知られる吾妻渓谷を見るためです。
川原湯温泉駅は一日平均利用者数四〇人という鄙びた駅ですが、無人駅ではありません。駅員に切符を見せ途中下車します。駅前に国道145、通称日本ロマンチック街道が走っています。渋川方面に少し進むと遊歩道の入口が見えてきます。渓谷にかかる滝見橋から、白糸の滝を望みます。
さて時刻はお昼時。ガイドによるとこの辺りにそば処「白糸の滝」があるはずでした。ところがいくら探してもそれらしき建物は見当たりません。というよりこの周辺に商業施設の類は一切見当たりませんでした。さては行き過ぎてしまったかと注意を払いながら、もと来た道を戻りましたが結局見つからないまま駅まで戻ってしまいました。この日快晴に恵まれたおかげで気温はうなぎ登りの暑さ。それに空腹が輪をかけて、わたしたち一行の間に険悪な雰囲気が漂いはじめていました。
RE:草津温泉
長野原草津口に到着しました。時刻は二時を回っています。すぐにJRバスが駅のそばのターミナルから出発するので急いで向かいます。バスは超満員。乗客はみな瞳に「温泉」という文字を映しているかのようです。首尾よくシートを確保し、草津温泉までの最後の旅程を楽しもうとシートを倒しました。
そこでふと、脳裏に冷たい予感が走り、凍りつきます。
「忘れた!」
先ほどの車中に写真撮影用の一脚を置き忘れてきたことに気が付いたのです。しかし時はもうすでに遅し。電車は行ってしまいました。高価なものでは無いのが救いですが、後悔の味がする最後の旅程となりました。
そんな気持ちを空が知ってのこととは思いませんが、草津温泉バスターミナルの上には灰色の雲が広がっており、小雨がぱらついていました。車外に出るとひんやりとした空気が肌を刺します。東京から六時間近くかけ、いま草津温泉に到着しました。
まずは今日の宿である「ビジネスホテルアゼリア」に向かいます。そうビジネスホテル。今回の旅は経済性第一です。バスターミナルの坂を湯畑とは逆方向に登り、ガソリンスタンドの角を右手に曲がると日本ロマンチック街道に出ます。街道筋に「セーブオン」という珍しい名前のコンビニがあり、それと並んで建っているのが今回の宿です。それにしても「温泉街」という立地からも、「ビジネスホテル」という名前にもそぐわないチロル風の店構えで違和感を放っていました。入口から受付までの廊下にはところ狭しとスキーの写真が飾られています。家族経営と思しく、奥さんがキーを手渡してくれました。部屋は二階の六畳の和室で、窓からは残雪を頂いた白根山を望むことができました。
RE:草津温泉
荷物を置いて、湯畑へ降りていきます。天気は優れなかったものの、観光客で混んでいました。最初の目的地は湯畑のすぐ傍にある「白旗の湯」です。これは草津を代表する外湯であるとともに共同浴場なので、誰でも無料で入ることができます。なかなか雰囲気のある建物でワクワクしました。施設は素っ気なくロッカーなどはないので脱衣所の棚に荷物や衣類を置きます。脱衣所は狭く、そしてやはり混んでいました。浴場は総て板張りです。浴槽は二つあり入口から見て右手は高温湯で澄んだ色をしています。左手は低温湯で白く濁っていました。
まずは低温湯に入り体をほぐしました。低温とはいえ普通の銭湯で言えば適温くらいの温度です。硫黄の香りが心地良い。肩まで浸かって上を見上げると吹き抜けになっており、上部にステンドグラスが嵌めてあるという凝った作りになっているのが見えました。外からみると櫓のように見える部分です。
高温湯にトライします。同じ湯のはずなのに、こちらは不思議なほど澄んでいます。そろそろと足を入れると電気でも当てられたかのようにビリビリしました。それでも我慢して肩まで湯に浸かります。湯温は四七度位でしょうか? たまらず三〇秒と待たずに湯船から飛び出してしまいました。友人に耐え難熱さであることを告げると、彼は結局入らないまま上がってしまいました。
次に「西の河原露天風呂」と並んで草津を代表する温泉施設である「大滝乃湯」へ向かいます。湯畑を出ると雨足が強まってきました。足元が心許ないなか、旅館の間を縫うように東に三〇〇メートルほど移動します。途中「煮川の湯」前を経由して到着します。