清野賀子-至るところで 心を集めよ 立っていよ

ついこの前、清野賀子のTHE SIGN OF LIFEをレポしたところなのですが、ウォッチしていた二作目(そして絶筆の)「至るところで 心を集めよ 立っていよ」の最安値が2万台になったので光速でポチってしまいました。
一年以上ウォッチしていてずっと下がらなかったのに、手に入るときはこうもトントン拍子にいくものかと思います。

本のタイトルはパウル・ツェランという詩人の作品から採ったようです。
有名な詩なんですかね?
清野さんはタイトルを決める前に亡くなってしまったそうなので、編集者がなんかいい感じに選んだんでしょうね。

サイズなのですが、「THE SIGN OF LIFE」に比べてだいぶ小さいんですよね。
定価も「THE SIGN~」が7千円に対して、半額の¥3,500でした。

内容もかなり差があって、一作目が中判カメラで2000~01年の間に日本の各地で撮った写真を収めているのに対して、本作は年代は不明ですが東京を中心に小型カメラで撮った写真を収録しています。
前作がバシッと構図を決めた絵画的作品だったのに対して、ややラフなスナップ写真で構成されています。
もっとも顕著なのは前作に決してなかったもの――、人物写真が少ないながら(数えたところ5枚)収められています。








この本を作成中にお亡くなりになったので、何か死に関係するメッセージが含まれていないかと勘繰ってしまうのはヒトの性。
しかしそういう匂わせを見つけるのは難しいですね。

ただ読んでいて気が付くのは、芭蕉の木と学校のような建物、団地が何度も登場していることですね。
芭蕉は建物の中から撮られたものもあり、この学校のような建物にゆかりがあることを伺わせます。

全くの想像ですが、清野さん母校ではないでしょうか?
そして団地は彼女の住まい、もしくは近所の風景だったのでは?

写真を撮りながら自身の在りし日に思いをはせていたのではと、何の根拠も無いのですが思ったりします。
私の母校には芭蕉の木は生えていませんでしたが、それでもひどく郷愁を誘われる写真だからです。

清野賀子-THE SIGN OF LIFE

写真家、清野賀子の写真集「THE SIGN OF LIFE」を入手しました。

以前、須田一政のTwitterアカウントでツイートされているのを見て興味を持ち、ネット上で見れる作品を見るにつけ、その静謐さに惹きつけらるようになりました。
17年に東京都写真美術館に見に行った「TOPコレクション 東京・TOKYO」にも彼女の作品は収録されていました。

しかし何の印象も無かった……。押しつけがましさというのが一切ない(言い換えれば「地味」?)作風ですね。

自殺だそう…。どういう経緯かは何の情報も見つからず分かりません。ただただ惜しいと思います

清野さんは09年に亡くなっていて、生前遺した写真集は2冊のみ。
一冊目はこの「THE SIGN OF LIFE」(02年)、二冊目は「至るところで 心を集めよ 立っていよ」(09年)

もともと定価7千円の「THE SIGN ~」ですが中古市場では結構な高額になっていて、Amazonなんかで見ると複数の出品者から4万円台を最安として15万円~150万(?!)など無茶苦茶な値付けがされていました。
たぶん150万は桁を見間違えてポチるのを期待しているんじゃないかと思います……。
4万円でも高価に過ぎるので一年以上様子見していたのですが、ある時2万円台で出品者が現れたので、光速でポチりました。

「本当に届くのか? 状態は綺麗なのか?」と届くまで不安でしたが、美品が届き大変満足しています。







人物を撮った写真は一枚も無し。
写真集の形も珍しい横長なのは全ての写真が横向きだからですね。
01~02年の間に日本各地を中判カメラで撮ったものが収められています。
中判だからか、どの写真も精緻で美しいですね。

どこにでもあるような、殺風景な眺めが大半を占めているのですが、それでいて印象深く、心が澄むような静謐な感情を覚えるのはなぜでしょう?
国旗のような画面の分割パターンが目に付きます。

その絵画的な構図の安定感がそうさせるのかな?とも思います。
画面に見られる静かな美しさは、清野さんが心の平安を希求していた表れなのかなと、事情もよく知らないのですが思い巡らしてみたりもします。

読んで、二冊目の「至るところで~」もぜひ手に入れたいと思えてきました。
しかし今の市場価格はちょっと手が出ないので、気長に機会を待とうと思います。