二眼レフカメラ

 ヤフーオークションで、三千円で落札した二眼レフカメラが届きました。
 調べてみると、Yashicaflex A2という機種のようです。
 なんと発売年は昭和三十一年。今から半世紀以上昔ということになりますね。
 ちゃんと撮れるのかな?
 しかし、それ以前にものすごく汚れているので、明日ヨドバシカメラに行って、メンテナンス用品を揃えようと思います。
 
 これを手に入れようと思ったのは、完全に須田先生の影響です。
 風姿花伝を撮ったのは「ローライフレックス」という二眼レフだったそう。
 同じカメラを手に取ったからといって、同じ写真が撮れる訳ではありませんが、まずは「形から」ということで。

神保町

 今日は本の街、神保町に行ってきました。
 上京して十年くらい経ちますが、訪れるのはこれが初めてです。以前から行ってみたいなとは思っていたのですが、なんとなく、きっかけがなかったのです。
 重い腰を上げたのは、須田一政の「風姿花伝」を手に入れようと決心したからです。
 昭和53年に朝日ソノラマから出版されたこの本は、須田先生の初写真集ですが、すでに絶版で手に入りません。
 代わりに、古本市場で高値で流通していることはネットで調べて知っていました。
 ずっと手に入れたいと思ってきましたが、値段がネックとなり手が出せないでいたのです。
 そこでサイトにアップされている画像を眺めて、やり過ごしていました。
 
 しかし我慢は体に良くない。
 ついに俺の金をどう使おうが俺の勝手だと、半ば逆上し、実弾(たま)をいくらか用意して、戦場に乗り込んだのです。
 
 向かったのは白山通り沿いにある、「魚山堂」という古本屋です。
 なんでも写真集を専門に取り扱っているそうです。ビデオ屋の二階という非常に分かり辛い場所にありました。
 新宿の海賊版レコードショップに近い雰囲気でした。わたしが小心なせいでしょうか? 一見さんお断りの空気が濃厚に漂っているように思えました。
 うなぎの寝床のような狭い店内でした。壁一面を本が覆っています。
 入り口のそばにはガラスケースが置かれ、篠山紀信なんかが置かれていました。
 客はわたし以外には誰もいなかったので、つかつかとレジに座っている店主のところに行って、にこれこれこういう本は無いかと尋ねました。
 「ネットで見たのか?」と訊かれたので、そうだと答えると、もう売れてしまったとのこと。ガッカリ……。
 しかし、ちょっと待ってと引き止められます。海外向けにストックしている在庫を調べてみると言います。おじさんはパソコンとなにやら格闘を始めました。その間、店内を興味深く眺めていました。
 内藤正敏の「東京」が置いてありました。思わず手に取ります。いい写真集でした。さて、お値段は?と見てみると、二万円……でした。くわばら。
 突然、背にしていた方の本棚が動き出します。びっくりしましたが、可動式の保管用書庫だそう。
 その中からほうれん草色のカバーの本を取り出して来ました。ついに憧れの本との対面でした。
 三十年前の本と考えれば、カバーは日焼けも少なく、よい状態でした。ぱらぱらとめくってみると、中は汚れもなく大変きれいでした。裏には白抜きで、「1800円」
 「おいくらですか?」
 「550ドル」
 そうかあ、須田先生は海外にもファンがいらっしゃるのか。やっぱり偉大だなあ。などと思考が空回りします。
 「いまのレートが92円だから」店主は電卓を叩き、「50600…、5万円でいいよ」
 思わぬ円高の恩恵を受けることになりました。
 
 放心状態で店を後にして、しばらくあてどもなく歩いてしまったのですが、今日はもう一つお目当てがあったのでした。
 「風姿花伝」の翌年に出された「わが東京100」です。
 次に向かったのは、岩波アネックスビル2Fに京都便利堂と一緒に入っている秦川堂書店。かなりこざっぱりとした店内でした。
 レジに座るおじいさんに訊くと、店内から運んできてくれました。値段は四千円。先ほどの店に比べるとかなり常識的な値段です。これはよい買い物でした。
 
 その後は街をぶらぶらとゆっくり見物しました。
 うず高く本が積まれた店先。本当にどこにもない、独特な街でしたね。気に入りました。
 次は特に理由がなくても出掛けてしまうかも。

街撮主義 −我−

 今日は訳あって、サブマシンからの投稿です。
 近頃グズついた天気が続いていたのですが、日中は晴れて気温も上がり、夏らしい陽気になりました。そこで気分もそぞろ、街(秋葉原)に繰り出しました。
 買い物が済んだ後、浅草橋まで足を伸ばして、 須田一政写真塾の修了展を見に行きました。マキイマサルファインアーツで開かれたこの展覧会のタイトルは「街撮主義 −我−」
 十四名のお弟子さん達の作品が、それぞれ十点くらいずつ並べて展示されていました。面白いのが人によって大判だったり、8センチ四方くらいのサイズだったりバラバラ。カラーもあればモノクロもありと個性豊かでした。
 一番須田先生の作風に近いと感じたのは、古田哲久氏の作品でした。モノクロで、情緒を色濃く感じさせました。個人的に気に入ったのは、東南アジアの街角を撮った志野和代氏です。目に染みるようなけばけばしい色合いの作品でしたが、そこがかえってモチーフにマッチしていました。
 
 同じギャラリーの一階では(須田塾は2F)「擬態美術協会」という別のサークルの作品が展示されていていました。わたしの目当ては修了展だけだったので、観ないで帰ろうかと思ったのですが、スタッフの方に是非にとも勧められたので、見てみることにしました。
 すると中は白い部屋。絵の一枚も掛かっていません。代わりに天井に透明なビニールチューブが張り巡らされていていました。それは間欠泉のように一定のタイミングでポンプから押し出されてくる水圧でプルプルと震えているのです。
 更に部屋に入った時から、手のひらで耳を押えたときのような「ごおぉ」という音がしていたのですが、その発生源はテープレコーダーでした。ただテープはカートリッジの中のではなく、滑車のような機構に乗せられ壁伝いに部屋をぐるりと取り囲んでいたのです。
 現代アートと申しましょうか。ともかく、わたしの理解を許さない世界です。場違いを感じ、早々に辞させて頂こうかと考えていたら、「とても良い」タイミングでこの作品の製作者の方が入ってこられました。
 その時ギャラリーはわたし一人だけでしたので、この作品について色々とお話が聞けました。とてもシュールな体験をさせていただきました。

須田一政写真展「眼界」

 須田一政先生の写真展が今日までということで見に行ってきました。場所は新宿御苑そばの「PLACE M」というギャラリーです。
 ギャラリーというものの、狭い雑居ビルの一室でした。ほとんど何も置いていない殺風景な部屋。そこに作品が30枚ほど展示されていました。
 入り口付近にはなんと須田先生ご本人が! スタッフとおぼしき方と熱心にお話されていました。恐れ多くて声を掛けることはできませんでしたが、写真集持ってくればサインしてもらえたかな……?

須田一政

 以前に買おうかどうか迷っていると言っていた、須田一政の写真集をとうとう買ってしまいました。それも「民謡山河」と「赤い花」の二冊ともです。
 須田一政の写真集の多くは絶版になってしまっていて、手に入れることができません。しかし自身のHPに雑誌に掲載されたものについては公開してあります。中でも「風姿花伝」は素晴らしく、「日常に潜む異常を切り取るようなスナップ写真を得意とする」の評そのままの仕事です。
 「赤い花」は「風姿花伝」以前の未発表作品集です。まだスタイルを確立する前なのか、それほど強い印象を受けませんでした。
 「民謡山河」は同時代の作品なので、全体に「須田節」とでも呼びたい独特の情感を湛えています。どっちかと言われるなら、「民謡山河」を推します。