RE:千葉旅行記 金谷鋸山‐青堀温泉

 大切通しまで戻り、切通しを抜けずに途中の階段を登ります。そこから石切場跡に出れます。石切場跡はまさに「天空の城ラピュタ」の世界です。直線的に伐り出された岩肌の非現実感といったらありません。そこに蔦や灌木が枝を張る様に自然の生命力を見ます。ひるがえって、放置されて雨ざらし、朽ちるがままとなっている工事道具や哀れです。
 北口管理所で拝観料六〇〇円を払い、日本寺境内に足を踏み入れます。すぐにバーミヤン石仏を彷彿とさせる百尺観音にド肝を抜かれます。ここから目を上げると地獄のぞきの嘴先が見えます。つまりここが地獄の底というわけです。観音像の裏を回りこむようにして展望台へ登っていきます。しかしここに来るまでに余りに歩き過ぎました。膝が笑っているような状態、一歩一歩登るごとに関節が軋むように痛みます。それでも歯を食いしばって山頂展望台に到着しました。さて地獄のぞきはやはり人気で人が群を成していました。柵に取り付き順ぐりに先を覗き込みます。まるで吸い込まれそうな眺めでした。頂上にはもう一つ展望台があり、そこからの眺めも見事なものでした。苦労して登ったかいがあったというものです。
 日本寺には広大な敷地に無数の石仏と仏宇とがあり、それら全てを見てまわることはとても出来ません。それに加えて膝の痛みと疲労がピークに達していたので真っ直ぐ下山したかったのですが、日本寺のシンボルである座ったスタイルとしては日本一というの大仏像だけは外すわけにはいきませんでした。
 展望台より保田方面の斜面を下って行きます。しかし途中の西国観音の付近で根を上げそうになりました。膝痛は登るより下るほうが痛いのです。座禅石で一歩も動けなくなり座り込んでしまいました。担架で運んでもらおうかなどと情けないことを考えつつ夕刻が迫りつつある空を眺めていました。しかししばらく休んでいると、次第に痛みが和らいできました。そこで下の大仏広場まで一気に下って行くました。杖を突き(幸い撮影用の一脚を携帯していた)膝をほとんど曲げずに歩く様は傍目からは不具者に見えたでしょう。