お腹を満たしたところで鋸山を目指して動きます。浜金谷駅前の十字路を郵便局のほうに折れ、道なりに進むと小川があり、渡ると金谷の観光案内所が見えます。その並びの角に精肉店があり、薬局との間の道が山へ向かうルートなのですが、正直かなり分かりにくいです。実際迷ったのですが、そのまま道なりに進んでしまいますと「かぢや旅館」の前を通って元の国道127に戻ってしまいます。「あれぇ、おかしいなぁ」と頭をひねって地図を見つめてようやく気が付きました。
改めて精肉店の脇の道を進むとしばらくして内房線に突き当たります。その下をくぐるとすぐに山手の道と線路沿いの道と分かれるのですが、線路沿いを行くのが正解です。ところでここでタヌキを見かけました。残念ながら後ろ姿だけを見せてすぐに茂みに消えてしまったためシャッターチャンスを与えてくれませんでした。
線路沿いにしばらく進むと案内板が現れ、登山道と車力道に分かれます。これはどちらを登っても山頂に到達できるのですが、登山道のほうがショートカットになっています。車力道はもともと切り出した石を荷車に乗せて運んだ道だそうで、石切場を経由して見応えがあるそうです。
車力道を入ると最初は舗装道路なのですが、森林道になると粗い石畳となります。岩をくりぬいた切通しが随所に見られ、当時の鉱夫たちの苦労がしのばれます。
ふうふうと息を継ぎながら登っていると頭上からなにか梢を揺らす音が聞こえてきました。目を凝らすとなんと猿でした。なんという自然。
山の中腹あたりに大切通しがあり、山頂を目指す道と「地獄のぞき」のある日本寺へ向かう道に分かれます。まずは山頂を目指すことにしました。
ここからはジェットコースターのような壮観、絶景の連続で人生観が変わりそうになりました。まず切通しを抜けてすぐに高さ数十メートルもの垂直の断崖にブチ当たります。その時点で「おぉ」なのですが、その足下に水溜りのような黒い池があり、小さな緋鯉が泳いでいるのです。姿は見えませんが蛙がケロケロと鳴き、その音が岩壁に幾重にも反射して幽玄に響きます。まるでこの掌ほどの地所が周りの世界から切り離されて存在しているような不思議な感覚を味わいました。