RE:東丹沢 七沢温泉の旅

 受付で入湯料千円を払います。日帰り入浴用の浴室までは廊下にテープが張られていて、そのガイドに沿って進みます。着いた先は露天風呂、ではなくその隣にある外気浴の浴室でした。ウェブサイトでは露天風呂が日帰り入浴用と紹介されているのですが、今日はどういうわけかやっていなかったようです。少々ガッカリしつつ、浴室へ。大きな岩風呂がひとつあり、どういう趣向か判りませんが蘭の鉢植えなどが周りに並べてありました。シャワーとカランが浴室の隅に備え付けてあって、山登りで書いた汗を流してから岩風呂へ向かいます。湯に入ると確かにアルカリ湯らしく肌がヌルヌルとします。ここは広沢寺には及ばないものの、pH9.5もの強アルカリ泉です。しばらく温まってから上がって、カランで背中を流すとまだヌルヌルする…。どうやら湯船だけではなくカランにも源泉が使われているようです。入っては上がり、入っては上がりをきっちり一時間ほど楽しんだ後浴室を出ました。湯船が一つきりなので、正直間が持たなかったのですが、そこは貧乏人、払った分だけは使おうという意地です。
 上がって体を拭いていると皮膚がつっぱるというか、ガサガサする感じがしました。いかな天然温泉とはいえ、これだけの強アルカリ、肌に良くないようです。ハンドクリームを顔に摺り込んで念入りにケアしました。
 
 七沢荘を出ると外はすでに日が落ちて真っ暗です。七沢温泉入口から出る、六時二八分の厚木行バスの時間が迫っていました。これを逃すと次の便は一時間以上待たなければなりません。ふうふうと息をつきながら十分ほどの距離にあるバス停へ急ぎ駆けて行きました。
 この時間、温泉街はすでに眠っていました。観光案内所も地酒を売っている土産物屋も暖簾を下ろしていました。停留所は暗闇のなかに沈むようにして立っていました。わたしは凍える思いでバスを待ちました。バスがやってくる少し前に女性と思しき影が少し離れて立ち止まり、バスが到着すると、ドアはふたりの影を飲んで動き出しました。