大沢川沿いを上流目指して進みます。すこしして「ますや」という店の傍を通りかかりました。釣り堀が付いた川魚料理家でした。大沢川で捕れた鮮魚を提供するものと見えます。ますやを限りとして商施設は絶えるようです。右手には川を隔てて田畑が広がっており、左手には山の斜面が迫っています。
その先、道は二股に分かれるので、地図を見て山側を選択しました。ここからは緩やかな傾斜が続きます。道路は舗装されているので歩きやすいです。道からは右手に常に沢が見下ろせました。清い流れに心を奪われます。見ごたえのある滝に突き当たるたびにわたしは沢へと滑り降り、しぶきに向かってシャッターを切りました。時には倒木なんかが跨っている沢は、人手の入らない無垢な自然の趣があります。注意して樹の根元を見ると、狸のものか狢のものかまったく同定出来ませんが、野生動物のものと思しき糞が落ちているのが確認できました。
ハイカーの姿は見ませんでした。シーズンによってはロッククライミングをする客もいるそうですが、時期ではないようです。「なめり岩」という巨大な一枚岩が沢を隔てて対岸にあり、そこだけ山が地肌を晒しているのですが、ロッククライマーにとっては格好の練習場になるそうです。
なめり岩をすぎてまもなく、大釜弁財天に辿り着きます。釜のような形をした滝壺を祭ったものだそうです。抉り取ったような淵には透き通った水が湛えられていました。夏であれば飛び込んで泳ぎたくなるような眺めです。這い上がるのは至難の業でしょうが。