円紫シリーズ最後の作品です。
わたしはこのシリーズが大好きだったので、これで終わりかと思うと読むのがなんとなく勿体無いような気持ちでした。
内容は別にして、妙に頷かされたのが、今まで一冊で一年ずつ進級していた「私」が、この本で就職をして一気に何年も年を重ねることです。
たしかに、就職をするとイベントが減って時間の経過が早く感じられますよね。そのコントラストがリアルだと感じました。
さて内容ですが、ミステリーとしてはどうなんでしょうかね……。
ここまで読んできたわたしにはキャラクターに愛着が湧いてきているので、彼女たちが何をやっても面白いのですが、この本からはじめて読んだ人にとっては「なんじゃこりゃ」ではないでしょうか?
この「なんじゃこりゃ」は今に始まったことではなく、前々作の「秋の花」から微かに臭いはじめ、前作の「六の宮の姫君」ではとんでもないところにすっとんでいったのですが、本作でも引きずってしまっているようです。
三篇構成になり、原点回帰のような雰囲気をみせてはいるのですが、巻末の解説でも言われている通り、「教養小説」になってしまって、初期の単純な謎解きの面白さから遠ざかってしまっているように感じました。
それでは、一作品目の「空飛ぶ馬」と、二作目の「夜の蝉」だけを読むようにひとに勧めるべきでしょうか?
でもわたしの忠告はきっと破られるでしょうね。だってそれだけ魅力的な文体とキャラクターたちなんですから。