スガシカオ「イノセント」

3ヶ月くらい前ですが、ブックオフでスガシカオの「労働なんかしないで光合成だけで生きたい」を500円でGETしたという記事を書きました。
実に素晴らしいアルバムで聴くほどに味わいがあり、今に至るまでよくリピートして聴いています。
それにしても500円というのは犯罪的というか、不当に安かったなと後ろめたさすら覚えます。(初回特典版でDVDも付いてるのに……)

私はスガシカオの長年のファンなのですがー、そう胸を張れないのはほとんどお金を落としていないからですね。
だいたい中古をブックオフで手に入れるか、ツタヤでレンタルしてリッピングして済ませていました。
CDを定価で買いたくないのは、ブックオフをはじめとするリユース店で二束三文で叩き売られているのを見るにつけ「定価などあって無いようなもの」という意識が頭をよぎるからです。

「労働なんか~」(19年)はふだんのアルバム以上に内省的な感じで、派手さは無くて最初は地味に感じるけど、何度も聴いているうちに歌詞の内容とかが生活の端々で思い出されるような、シミジミとした良さがあります。
一つ前のアルバム「THE LAST」(16年)も同じような感じで、スガも円熟の境地に入ったのかなと思わせます。

しばらくは「THE LAST」と「労働なんか~」をとっかえひっかえ聴いていたのですが、次第に新しい曲への渇望が湧いてきたので、今年の2月に出たばっかりの12枚目のオリジナルアルバム「イノセント」に手を伸ばしました。

いちおう見て回れる範囲のブックオフとディスクユニオンを見てみたのですが、「ナシ!」
ここに来て初めてファンらしく新品をGETしようかと決意します。
しかし、どうしても定価¥3,300を払う気にはなれず、Amazonアウトレットで出品されていたものを¥2,673で購入しました。

アウトレットってどんな状態なんだろう? バキバキだったりしないよね……。
と、心配しつつ届いたCDをみるとこんな感じ。

「安心してください!」とばかりに「検品済」のシールが貼ってあります。

ケースの裏を見ると小さなキズが入っていたので、恐らくこれでB級品落ちしたんだと思います。

ディスク自体は綺麗で、読み取り面にも傷はありませんでした。
ブックレットも問題なし。
今回はクリムゾンレッドで統一されてカッコイイですな。

早速聴いてみます。

一曲目の「バニラ」はサディスティックな感情を歌った曲で、前作、前々作にはない挑発的な雰囲気に「おや…」と面喰います。
ファーストアルバムに入ってる「イジメテミタイ」系列の曲ですね。
過去アルバムにしばしば入ってますが、ここ最近は影を潜めたかと思ったら枯れ切れなかったと見えます。

二曲目の「さよならサンセット」はアルバム「TIME」に入っている「June」に似た爽やかかつメロウな曲。
三曲目は……、という調子で一曲ずつ解説していくことは止めますが、12枚も出しているので「前にも聴いたことあるな…」と思い当たるような曲が多いです。
それによって昔からのファンはいつものスガシカオ節を感じ、安心して聴ける面もあるかも知れません。

しかしアルバムを通して聴くと感じるのはスガシカオの「変節」ですね。
3曲目の「叩けばホコリばっかし」、6曲目「バカがFUNKでやってくる」、10曲目「メルカリFUNK」、12曲目「おれのせい」はファンクザウルス名義の4曲。
一聴して「ウッ?!」と思う。
70年代にアメリカで流行った、大人数でガヤガヤとやるファンクミュージックのよう。
これまでのスガシカオの音楽って、ファンキーだけど基本的にはJ-POPだったと思うのですが、これはその枠を飛び越えている。
前二作と内省的なのが続いたのでその反動でしょうか?

もしかしたら3作続けて同じような作品にならないようにという判断なのかも。
でもスガシカオの根暗な曲が好きな人がファンクザウルスのネアカな曲を歓迎して聴けるかな?
私はアルバム通しで聴いている時もこのトラックは飛ばすことが多いですね……。

そしてどうしても一言いいたいのは、8曲目の「東京ゼロメートル地帯」
シっ、シティポップっすか?!
スガシカオ一流のブラックジョーク、だと思いたい。
いや、シティポップは海外から人気が再燃していると聞くし、定額音楽サービスの隆盛を見込んだ一流の戦略なのかも……。

とにかく前二作に対してバラエティーに富む作品になっていることは確かですね。
「このまま枯れるつもりはねぇぞ!」という意思を感じる作品です。

ちょっと今は付いていけてませんが、聴いているうちに「やっぱスガ最高だわ」「ファンクザウルス最高」と言ってるかも知れません。

バイアンプ接続を試してみる

デジタルアンプを手に入れた機会にある実験をやってみたいと思っていました。
それはスピーカーの「バイアンプ接続」

これは私の持ってるスペンドールのS3/5という小型スピーカーなのですが、ポピュラーな「2Wayスピーカー」というやつで、高音を鳴らす2cmのツイーターと低音を鳴らす14cmのウーファーが付いています。
大型のスピーカーだとさらに3Way、4Wayとスピーカー数が増えていく傾向がありますね。

普及帯のスピーカーだと、アンプから出た一対の信号線をプラスマイナスの端子に挟んで音を出すのですが、高級機だとツイーター用、ウーファー用それぞれの端子が用意されていたりします。
それって、スピーカーを鳴らすのに2台アンプが必要ってコト……?!(ちいかわ構文)

「でも一台しかアンプ無いようッ……」って言う人が多数かと思います。
「安心してください、履いてますよ」
って感じで普段はツイーター用とウーファー用の端子の間は銅板(ジャンパー)を渡してショートしてあるので、一台のアンプで問題なく音を出すことができます。

「じゃ何でわざわざツイーター用、ウーファー用に分けて用意しているのッッ?!」
当然の疑問です。
それはアンプを奢って二台で駆動したいというマニアが居るからなんですな……。
いや、二台なんて序の口ジョージで、左右のチャンネルを独立したアンプを使って四台で駆動するなどという狂気すら存在します。

さすがにS3/5のごとき小型スピーカーでそんなことをする人はいませんが、大型フロア型スピーカーなら普通に考えられます。
JBLの5Wayの大型スピーカーを、各ユニットごとかつ左右独立に10台のアンプで鳴らすというキチガイじみた事例も聞いたことがあります。
まさに贅沢の極み。システムの総額は家が買えるほどの値段になるでしょうね。

スピーカーを鳴らした時にピストン運動によって逆起電力が生じ、ジャンパーで端子をショートさせているとそれが他のユニットに伝わって音が濁る。
バイアンプにすることで高音、低音それぞれからの影響の伝播を排除することができる――。

――的な説明をネットで良く目にしますが、恐らく皆さんの眉毛は唾でしとどに濡れていることかと思います。

しかしやらずに否定するのはよろしくない。
もしかしたら意外に目覚ましい効果があり、新しい世界が開けるかも知れません。
前々から機会があったら試してみたいと思っていたのですが、このたび余分なアンプが手に入ったので念願叶って試してみました。

その実験のためにアマゾンで手に入れたのは、AmazonベーシックのRCAケーブル(¥890×2)

アンド、2分岐アダプター(2個で¥629)

これを使って、一対しかないCDプレーヤーのライン出力を2分岐させ、一方は真空管アンプ、もう一方はデジタルアンプに送ります。

今まで製品のおまけに付いてきたようなRCAケーブルしか使ってきませんでしたが、AmazonベーシックのRCAケーブルは太いし端子もシッカリしてて良いですね。
スピーカーケーブルもAmazonベーシックを使ってるし、私にはAmazonベーシックが必要にして十分ですな。

役割分担ですが、デジタルアンプの高音はキツさがあるように思えたので低音側を担当してもらい、真空管アンプは高音側に割り当てました。

デジアンの出力は一対のウーファー用端子(下)に繋がっています。この写真では見えてませんが、真空管アンプからの出力がツイーター用端子(上)に来ています

適当にアマゾンミュージックの曲をかけて、最初は高音側のボリュームを絞って聴いてみました。
この状態だとウーファーからしか音が出ていないはずですが、けっこう普通に聴こえます。

ちょっと調べてみたところ、このスピーカーのクロスオーバー周波数(ツイーターとウーファーの役割分担の切れ目)は4.5キロヘルツということでした。
シンバルとかオルガンとかは例外ですが、大抵の楽器の音域は最高でも4キロヘルツくらいです。
ウーファーの担当音域でカバーできていることになりますね。
この大きなウーファーでも意外と高い音まで出せていることに驚きを感じます。

しかし、古いラジオのようなナローな音です。
この状態から少しずつ高音側のボリュームを上げていくと次第に音が潤い、弾むような生気がみなぎってくるのを感じます。
ただ、最も好ましいバランスを超えて高音のボリュームを上げるとヒステリックで神経質な音になります。

次に低音側のボリュームを完全に絞ってみました。
そうすると、シンバルの音やサ行のボーカルだけがツイーターから小さく出ています。
小さな音とはいえ侮るなかれ、音楽全体の印象を大きく変える作用をするんですね。

音の土台を作るのはウーファーですが、ツイーターは音の質を決める大事な役割を果たしていることが分かりました。
よくオーディオマニアのシステムで、大きなスピーカーの上にチョンとツイーターが追加されて置いてあるのを見るのですが、なんとなくその理由が分かったような気がします。

そんな興味深い実験をしつつ、色々な曲をとっかえひっかえしばらく聴いてみたのですが……。
「バイアンプにしても音は変わらない!」という結論に達しました。
少なくとも私の耳では分かりませんでした。

そして高音と低音のバランスが大事であることを学びましたが、ツイーター端子とウーファー端子をジャンパーでショートさせた時が最良のバランスになるようにできてるんだなと感じました。
なので二台もアンプを繋いでアレコレ腐心するのは、はっきり言って不要かと思います。
まあ、全てのスピーカーについてそうであると強弁することはしないのですが、私のなかではそういう結論ですね。

雑誌の付録でデジタルアンプをGETした話

いやぁ~久し振りにやっちまったなァ……!
久し振りにオーディオに散財である。

「ステレオ」という老舗のオーディオ月刊誌があるのですが、近年では出版不況で紙の本が売れないためか、こういう特別付録の付いたモックをしばしば出しているようです。
オーディオなんていうかさばるものを、雑誌サイズに収めるのはなかなか苦労があるんじゃないかと思うのですが、今回の付録は「デジタルアンプ」です。

“LXA-OT4”という型番で、なんか名義貸し臭い気もしますが、ラックスマンという高級アンプメーカーが設計したものだそうな。
完成品ではなくキットなので、ドライバーとラジオペンチで組立てる必要があるのですが、簡単そうなのでちょっとした電子工作気分で楽しめそうです。

フォローしているオーディオ系のブロガーさんがいるのですが、その方が記事に取り上げているのを見て衝動的にGETしてしまいました。
そのブロガーさんは昔は金満系のシステムで派手に楽しんでいたのですが、今では簡素なシステムに落ち着いている方。
その枯れていく過程に興味があり、記事を読んでいます。

私のなかにもいずれは三桁万円のオーディオをガツン!と買うてやりたいナァ……、という埋火のような仄暗い情念があります。
とは言え、家のローンもまだたんまりある。
一体そんなものをどこに置くの? いつ聴くの??という現実により、実現は程遠いです。

ちょっと脇道に逸れますが、ステレオ誌は大学生の頃よく立ち読みしてました。(20年くらい前)
紙面で紹介されているような高級機はとうぜん貧乏学生の手に届くような代物ではなく、一体どんな音がするんだろうと想像を膨らませていました。

「渡辺篤史の建もの探訪」のオーディオ版みたいな、マニアのお宅を訪ねて自慢のシステムを見せてもらうコーナーがあって、毎回けっこう楽しみにしていました。
主役はオーディオ機器なんですが、そこにステータス全降りして部屋は六畳の和室なんです……、みたいな恥ずかしい姿を開陳するはずもなく、住環境からして隙なく整えていたように思います。
当時はあまり気にしてなかったのですが、並大抵の財力じゃないと成立しないでしょうね。
みんな経営者とか医者、弁護士みたいな高給取りだったのかな……?

しかし時には心に巣食うケモノに餌を投げてやらないといけないので、こういったモックは格好のアイテムになりますな。
さてお値段は¥27,500(税込み)
アレ……、結構お高い。

お高いんですがー、デジタルアンプにはかねてより関心を抱いていました。
マッキントッシュとかの超重い高級アンプと、弁当箱くらいの中華デジタルアンプを目隠しで比較して、遜色ない結果だったみたいな動画がYoutubeに良くあるのですが、見るにつけ「デジタル」カメラが従来のフィルムカメラを葬り去ったように、「デジタル」アンプは旧来の真空管とかトランジスタのアンプを葬り去るポテンシャルがあるのでは?と思います。

ただ実際のところ、遜色ない結果となったのは、聴覚というのが絶対評価を下すことができないイイカゲンな感覚だからだと思います。
もし目隠しでなければ視覚に引っ張られて高級アンプの方が絶対良い音だと感じたハズ……。
イイカゲンである以上、個人の好みの世界なので旧来のアンプも新しいデジアンも市場に混在したまま残っていくでしょうね。

デジタルアンプの大きな美点は消費電力の少なさ。
旧来のピュアオーディオのアンプはたかだか音を鳴らすためだけにアホ程電力を食い、暖房器具のように発熱してきました。
しかもハイエンド製品に関しては消費電力を減らそうなどという殊勝な考えは露ほども無く、熱ければ熱いほどエライと言わんばかりです。
そんな頭ジュラ期のエレクトロニクス製品はサスティナブルとか気取って言っちゃうこの時代にそぐいません!(机を叩く)

ちょっと電卓を弾いてみたところ、今のシステムをこのデジアンで置換すれば、291Wから114Wに約60%消費電力がダウンすることがわかりました。
フルパワーの大音量で聴いてる訳ではないので実際はここまでの消費電力は無いと思うのですが、アンプって結構電気を食いますね……。

キットはこんな感じでパックされてます。

全部出してみたところ。

基盤をアップで

<組立ての様子>

やはり特に難しいところは無く、説明書に従って30分くらいで完成しました。
――ドキドキのスイッチ・オン!

おお! ちゃんと音が出てる。
ボリュームは9時くらいで充分な音量が出ています。

ノラジョーンズとかスガシカオの曲を数曲聴いてみます。
う~ん、高音がキンつく感じがする。

ちなみに従来のシステム

が、こうなりました。

従来のシステムは、なんでこんなに取り回しているんだという感じですが、色々なソース(ラジコ/アマゾンミュージック(パソコン)、インターネットラジオ/サーバに置いた音楽ファイル(ネットワークプレーヤー)、CD)を聴きたいという願望を取り込んでいくとこんな形になっていました……。

何と言うか、今までのシステムの音が芋焼酎だとすると、キンミヤ焼酎のような味も素っ気もないような音ですな。
試しにプリアンプをデジアンの前に噛ませると音が太くなり従来の音にかなり近づきました。
それってさあ、音のキャラクターはプリアンプで作られるってコト……?!(ちいかわ構文)

しかしプリアンプは真空管アンプなので夏場はカンカンに熱くなるためどうしても外したい。
なので外してしばらく聴いているとー、次第に慣れてきて高音のキツさも気にならなくなり、むしろクリアな音で心地良いと思えてきました(単純)
長く聴いていても箱を触ってもぜんぜん熱くなりません。
また聴きたいときにスイッチを入れるだけで聴ける簡便さも良いですね。

そう言えばこれまでは音楽を聴く分には気にならなかったのですが、ラジオを聴いていると男性DJの声が太すぎて聞き苦しいと感じることがしばしばありました。
それが気にならなくなった。
たぶん、というか間違いなく、こっちの方が元々の音に忠実なのでしょうな。

ネットで同じような経験談を探してみるとー、真空管アンプで聴くとコンプレッサーをかけたように音が太く、密度が増して聞こえるという意見を見つけました。
いまに始まったことではないですが、ポピュラー音楽ってラジカセとか(もしかしたら最近はスマホも)で聴くことを想定して、収録している音の大小の差が小さくなるように仕上げているんですよね。
「海苔音源」と揶揄されるんですが、音圧が上がって一聴したところ迫力のあるいい音のように聴こえます。
真空管アンプ特有の音の歪みによって、そういった圧縮効果が意図せず生まれてたんじゃないかと思います。

まぁちょっとこれまで真空管信仰みたいなところがあったのでー、そこを相対的に見れるようになったのは良いことだったんじゃないかと思います。