最近のフィルム

約三年振りにフィルムを現像しました。
もう現像のやり方を半ば忘れてしまい、ネットで確認しようとしたところ、前まで参考にしていたサイトがもう無い……。
どうにか当時の記憶を掘り起こしつつ現像しました。
ドキドキでしたが、絵が浮かび上がって良かった――。

トライX400が三千円もするような昨今では、もうフィルムで撮ろうという人は現れないのでしょうね。
昔はヨドバシでも500円くらいで売っていたものですがー。

7年くらい前に買い溜めしている分を細々と使っていましたが、これで最後の一つに……。
使い切ったら私もフィルムは卒業かな?と思います。(しかしこのペースだとそれは数年後になりそうですが)

前は出かける時にはフィルムカメラを同伴していたものですが、すっかり触る頻度が下がりました。
腕もだいぶ落ちたと思います。
ピントが合っていない写真が多く、残り少ないフォルムだというのに情けないです。

しかしその一因はスマホのカメラの長足の進歩にあると言えるでしょう。
AIが自動で判断して、いい感じのカラーバランスで撮ってくれます。
一眼レフよろしく背景をボカすなど、心憎い芸当すらこなすようになっています。

専用機でないので、シャッターを押すまでに時間がかかるなどイラッとさせられる瞬間もありますが、実用上もうこれで十分じゃない?と思える水準に到達しています。
ちょっと味気ないですが、それに文句を言うのも変ですよね。

<渋谷>

<反町公園>

<滝ノ川>

<本覚寺から見た横浜ポートサイドのタワーマンション>

<東横フラワー緑道>

<鶴屋町>

写真の神様にもやはり前髪しかない

最近とんとん拍子に欲しかった写真集が手に入ったので、これまで眠っていた収集欲が頭をもたげて来ています。

筆頭は、植物写真家として高名な山村雅昭の「花狩」(88年)
出来れば「植物に」(76年)も欲しいですが、市場から姿を消しているとおぼしい。
市場価格も一万五千円くらいとこなれていて、今すぐにでもGETしたいところですが、今月は2冊も買ってしまったのでちょっと自重中。

ところで山村雅昭氏も「花狩」を絶筆に出版前に自殺されています――。
作家も芥川龍之介、太宰治、川端康成と枚挙にいとまがないですが、写真家の自殺率というのも実は高いのか……。

私の写真集収集の趣味は後悔の歴史でもあります。
当時の自分に言ってやりたい。「欲しいと思ったら即買え」

動物写真家の宮崎学さんの「死 Death in Nature」という写真集があります。
死んだ鹿やタヌキが自然に還るまでを克明に記録したものです。
現代の九相図とでも言うべき衝撃的な内容ですが、それでいて不思議と全くグロくなく、自然の調和の美しさに感嘆します。

10年以上前だと思いますが、それをたまたま書店で手に取ってたいへん感銘を受けました。
受けた――、ハズなのですがしばらく忘れており、ふと今になって思い出し調べたら、既に絶版で古書市場ではたいへん高価になっていました。

もう一つ!
水俣を撮ったことで知られている、世界的に著名な写真家ユージン・スミスの助手も務めた森永純の「河‐累影」(78年)
これも10年くらい前になるでしょうか、友達と中野ブロードウェイに遊びに行った際にまんだらけのショーウィンドウに展示されているのを見たのです。
確か¥22,000でした。

ひとりで来ていたら確実に手に取ったと思いますが、大型本なので、友と連れ立って歩くのに手がふさがって不便だと思いスルーしてしまいました。
しかしその後なぜか忘れ、今に至るまで中野ブロードウェイを再訪することもなく……。

大型書店の棚を覗けば数多くの写真集が並んでいます。
時の経過とともにその後プレミアムが付くのか、特に何も無く忘れ去られるのかは分かりませんが、定価はある意味バーゲンセールの値札のようなもの。
もしも少しでも心に残る本があれば、迷わずGETするのが良いでしょう。
たぶんそれは一期一会の出会いです。

清野賀子-至るところで 心を集めよ 立っていよ

ついこの前、清野賀子のTHE SIGN OF LIFEをレポしたところなのですが、ウォッチしていた二作目(そして絶筆の)「至るところで 心を集めよ 立っていよ」の最安値が2万台になったので光速でポチってしまいました。
一年以上ウォッチしていてずっと下がらなかったのに、手に入るときはこうもトントン拍子にいくものかと思います。

本のタイトルはパウル・ツェランという詩人の作品から採ったようです。
有名な詩なんですかね?
清野さんはタイトルを決める前に亡くなってしまったそうなので、編集者がなんかいい感じに選んだんでしょうね。

サイズなのですが、「THE SIGN OF LIFE」に比べてだいぶ小さいんですよね。
定価も「THE SIGN~」が7千円に対して、半額の¥3,500でした。

内容もかなり差があって、一作目が中判カメラで2000~01年の間に日本の各地で撮った写真を収めているのに対して、本作は年代は不明ですが東京を中心に小型カメラで撮った写真を収録しています。
前作がバシッと構図を決めた絵画的作品だったのに対して、ややラフなスナップ写真で構成されています。
もっとも顕著なのは前作に決してなかったもの――、人物写真が少ないながら(数えたところ5枚)収められています。








この本を作成中にお亡くなりになったので、何か死に関係するメッセージが含まれていないかと勘繰ってしまうのはヒトの性。
しかしそういう匂わせを見つけるのは難しいですね。

ただ読んでいて気が付くのは、芭蕉の木と学校のような建物、団地が何度も登場していることですね。
芭蕉は建物の中から撮られたものもあり、この学校のような建物にゆかりがあることを伺わせます。

全くの想像ですが、清野さん母校ではないでしょうか?
そして団地は彼女の住まい、もしくは近所の風景だったのでは?

写真を撮りながら自身の在りし日に思いをはせていたのではと、何の根拠も無いのですが思ったりします。
私の母校には芭蕉の木は生えていませんでしたが、それでもひどく郷愁を誘われる写真だからです。