(テレワで鬱憤が溜まってるせいかかなりの放言となっているので、お見苦しいことをご容赦ください。)
ブログの更新が頻繁になるのはテレワークのお陰でしょうか(?)
久し振りにオーディオ系の記事です。
テレワークで仕事している間は、だいたい音楽を聴いてるのですが、大きな音を出すのは肩身が狭いのでイヤホンかヘッドホンで聴いています。
最初は普通にスマホに繋いで聴いていたのですが、次第に物足りなくなり、しばらく使ってなかったヘッドホンアンプ、Cayin HA-1Aを引っ張り出して聴き始めました。
さらにしばらくすると、ソースの音が不満に感じられ、これまたしばらく使ってなかったCDプレーヤー、KENWOOD DPF-7002を出すことに。
ここに、DPF-7002(CDプレーヤ) ⇒ HA-1A(ヘッドホンアンプ) ⇒ MS-Pro(ヘッドホン)という、8年前から使っているラインが久し振りに復活することとなりました。
よほど仕事がヒマなのか、さらに音をグレードアップしたい欲にとりつかれはじめ……。さりとて新しい機器を買うほどのお金の余裕も無いので、手軽に音を変える手段としてヘッドホンアンプに目を付けました。
HA-1Aは真空管アンプなので、真空管をより良いものに交換することでカジュアルに音質向上が図れるのではないかと。
むかーし、タモリ倶楽部で「球転がし」と称して秋葉原のオーディオ店でそんな遊びに興じているのを見た記憶がありますが、それを格段にスケールダウンしてやってみようかと思い立ちました。
ところで唐突にですが「アンプ」って一体何なんでしょうか?
オーディオに半歩足を踏み入れかけた中学生のころ、その存在に大いに疑問を覚えたものです。
無論、CDプレーヤーとかからの信号をスピーカーが鳴らせるレベルまで増幅する装置であることは承知してるのですが、音を鳴らすスピーカー、音の源であるプレーヤーに対してただ信号を増幅するだけってなんと芸のない……。
しかもカタログやオーディオ誌を見る限りだと、増幅する際にノイズやら歪みがやたらと発生するそうで、それを無くすのに涙ぐましい工夫が必要なんだとか。
それが「俺がステレオの中心だ」と言わんばかりに、デンと鎮座してるのを見ると思わず「デクノボー」とでも呼びたくなります。
しかしながらCDプレーヤーから出てる信号をそのままスピーカーに繋いでも、蚊の鳴く音にも及ばないくらいの音しか出ず、音楽を聴くどころではありません。
プレーヤーから直に出力された、ノイズも歪みも無い信号は、スピーカーを繋いだら消えてしまう儚い幻のようなものなのでしょうか?
はい。というかそんなものがあると考えることが幻想でありオカルトの素ですねー。
なので「アンプとは何か」の答えは「必要悪」とでもなりましょうか。
手持ちのHA-1Aしかちゃんと聴き込んだことがないので、真空管アンプの音の特徴というものを自信を持って言うことはできませんが、ギターをボトルネック奏法で弾いたときのようなキラキラした付帯音が付くように感じます。
これが歪みなのかも知れませんが、音がリッチになったように思われむしろ好ましく思われます。
とは言え真空管アンプの最大の魅力はそのビジュアルにあることは間違いありません。
墓石を思わせるトランジスタアンプに対して、ピカピカの真空管が赤熱して真空放電し音を増幅する様が外から見ることができるというのは、言わば築地の寿司職人に目の前で目の前で握ってもらい手掴みで食べている感じ!
一級のエンターテイメントでありロマンと言えるでしょう。
車で例えるなら、テスラに対してクラシックカーを嗜むような…。いや蒸気機関というレベルかも知れません。
この頃はどうなのか、オーディオ誌をとんと読まなくなったので分かりませんが、昔は真空管アンプと言えば「偶数次高周波歪」という謎の専門用語でもっともらしく音の良さの秘密を解説してる記事をよく目にしました。
あまりに突っ込みどころの多すぎる理論なので、たぶんもうそんなことを言う人はいなくなったと思いますが、トランジスタアンプも真空管アンプも言うほど音は変わりません。
むしろ同じくらいHi-Fiに作ろうとしたら真空管アンプの方がコストが掛かるでしょうね。真空管アンプはクラシックカーのごとき、実用度外視の濃厚な趣味の世界です。
あばたもえくぼじゃありませんが、ブーンとハム音がしてても、曲間の無音部分でザッとノイズが乗っても、それは「味」
「おっ!がんばってるな」くらいの大らかな気持ちで許せーー、ないんだなこれが。
置物じゃない!!
縛りプレイじゃないですが、真空管アンプという枠の中で可能な限りよい音で聴きたい。先ほど言ったことと矛盾するようですがこれもオーディオマニアの偽らざる本心でございます。
そもそもそんなに簡単に割り切れるなら世の中には業務用アンプさえあれば事足りてしまいます。
みんな多かれ少なかれストイックになり切れないものがあるので、様々な商品の形態が存在することになるのでありましょう。
特に真空管アンプは、装置の心臓とも言える真空管を交換できるというところにマニアのハートを揺さぶる蠱惑があります。
オーディオマニアとはスピーカーケーブルを替えたり、アンプヒューズを交換して「音が変わったッ!!」とキャッキャと喜んでしまう人種です。
まぁそんなことで何も変わるはずがなく、プラシーボ効果に過ぎないのですが、真空管の交換はそれに比べてなんという説得力。ケーブル交換程度で音の変化を感じるほどに感覚をチューンしていたら、真空管交換したら「頭壊れたァ!」と発狂してアルカイックスマイルを浮かべる可能性すらあります。
「もっとがんばってトランスも交換してみろよ」などという意地悪な声には耳を貸さず、お部屋のアロマを替えるくらいのカジュアルさで音の変化が楽しめるのが球転がしの魅力なのです。
もうちょっと真面目に言うと、ニンゲン不思議なもので、手の掛かる子ほど可愛いまであります。
逆に最初から良くできる完璧超人は「あいつ可愛い気ねぇんだよなー」と裏で罵られてたりして…。
とはいえずっとポンコツではやはり駄目で、少しずつ改善していく様を見せると「やればできる子ッ!」とか「伸びしろがある」とか賞賛の嵐となります。
人というのはどうしても将来を予測しながら生きる習性があるため、動きというものに重きを置く。
例え高い水準でも変化がないと閉塞感を覚えてしまい、逆に今が低い水準でも良い方向に動きがあれば簡単にバラ色の未来を想像してしまうからではないでしょうか。
言うまでもなく前者がトランジスタアンプ、後者が真空管アンプにあたります。
HA-1Aはそんな心憎いチューンを狙ったのか、何も考えてなかったのか分かりませんが元々付属してる球はかなり難ありの球。
ここまで読んでくださった方にはとっくにご存じか、まったく興味ないかの二択でしょうが、ヒマなので真空管アンプの仕組みについて講釈させて頂きたく思います。(そろそろ上司がキレる頃だ…)
真空管アンプのカタログを読んだりしてて、初段管とか出力管などという表現が現れ(プリ管、パワー管とも)、思わず「ふんふん…」と流しそうになりますが、これはCDプレーヤーなどから入ってきた信号を一本の真空管ではスピーカーを鳴らすほどの電力に増幅しきれないので、山のてっぺんまで複数のポンプで水を汲み上げるよろしく、複数の真空管で分担して昇圧することを示しています。
だいたい初段⇒二段⇒出力段という構成になることが多いようです。
これはトランジスタアンプでも同じようで、初段は真空管だけど出力段はトランジスタというハイブリッド構成のアンプも実際にあります。
素直な疑問として増幅のステージ毎に信号に歪みが乗るのではないかと思いますが、たぶん初段⇒出力段みたいにステージを減らすとそれだけ一本の真空管に負荷をかけることになりかえって歪むためやむを得ずこういうことになってるのだと思います。
真空管の型番を書いてもたぶん電車に興味がない人に「キハ」だの「モハ」だの言うようにチンプンカンプンでしょうが、一応HA-1Aの初段は12AX7、二段は12AU7、出力管はEL84(2本)という管が使われています。
下の写真だと右から、12AX7、12AXU7、EL84ですね。
いずれもミニチュア管という小さい種類で、一番大きいEL84でも7cmくらいですね。
で、銘が消えかかっていますが元々付属してた12AX7と12AU7は”Cayin”とプリントされてますが多分中国製。
EL84はエレクトロハーモニクス(エレハモ)のロシア産球です。
これもとっくにご存じか興味が無い系だと思いますが、真空管を未だに生産してるのは、中国、ロシア、スロバキアの3国。
昔はアメリカ、ヨーロッパ、日本でももちろん作られていて、何十年も前に作られた松下、東芝、NEC製の真空管が高価で取引されたりしています。
今でもオーディオ用とかギターアンプ用に需要があり細々と作り続けられているようですね。
現行品の品質としては、中国<ロシア<スロバキアと囁かれてますね。
HA-1Aを買ってしばらくした後、付属管がどうにも気に入らず秋葉原のアムトランスまで足を運んでJJエレクトロニクスのスロバキア管に総取り換えしたことを覚えています。(もう12、3年前のこと)
アムトランスの店舗は今はもう移転したみたいですが、当時は高架下のぐちゃっとパーツ店がひしめき合っている一角に収まっていました。
買い物したら店のおじさんにお土産としてどら焼きを貰いました。懐かしいな。
JJに替えてからは耳障りなハム音や時折ザラッと入るノイズが無くなり、高音のカサつきが大分低減されたように思われ、それからは安定して聴けるようになりました。
ただ先述の優等生はつまらないの法則の通り次第に飽き、そもそもオーディオ自体あまり聴かなくなり放置される運命を辿ったのでしたー。
で、冒頭に戻るのですが、テレワをするようになり久し振りに引っ張り出してきて、実はまだ伸びしろが残ってるのではないかと考えるようになった次第です。
いったん全部を付属球に戻して聴いてみます。
やはりノイズが乗り、荒削りな印象ですが、元気の良い音でこれはこれで悪くはないなと思います。なんかアホの子という音です。
この元気よさを生かしたままノイズが減ればより良い音になるのではと考えます。
で、恐らく中華管が悪さをしてるのだろうと推測し初段と二段の変更を思いついたのですが、お予算の関係で初段のみの交換とすることにしました。
白羽の矢が当たったはムラードの12AX7リイシュー(復刻管)
またしてもムラードなんて知ってるよ/興味なしでしょうが、言いたいッ! 言わせてッッ!!
ムラードはイギリスの真空管ブランドで当然とっくに生産を終了してますが、ビンテージ品が市場で高値で取引される人気球です。
偽物も出回ってる程だとか……。すごい世界だ。
その意匠を現代に復刻したものです。生産国はロシア。
アマゾンで買ったのですが、¥4,280(税込み)でした。う~ん、ラフロイグかボウモアが一本買えますな。
中華管はハブって、初段ムラード - 二段JJ - 出力段エレハモ という構成にしドキドキの電源ON!
……なんかやたらと固いな。
なんかアホの子が無理やり正座させられているような。
しかも曲間の無音区間でノイズが出る症状は直ってない。
これは見立てが間違ってて、ノイズの原因は出力管のエレハモだったか……?
エレハモを外して、初段ムラード - 二段JJ - 出力段JJ という構成にしてみます。
うん、これは綺麗な音だ! ノイズが消えました。
しかし、元々のオールJJと比べて何が違うのかと言われると答えに窮します。
やはり元気の良さと粗さは切っても切れない関係にあるのかー。
中華管をひとつまみのスパイスと加えるべく、初段ムラード - 二段中華 - 出力段JJ にしてみます。
おお、ノリが蘇った。綺麗さもあり良い音です。
これもしかして中華が悪いんじゃなくてエレハモが悪かった……?
試しに、初段・二段中華 - 出力段JJ にしてみると、オオー?! 低音がズムズムと良いノリを保ちながらも荒れてない!
一番好きな音です。
なんと、これが正解だったか。盲点。
これまでこの組み合わせは試してこなかったなー。
とすると、ムラードは不要……?
とは言え、折角買ったムラードであるし、しばらく聴いているうちに音が変化してくるかも知れませんので、伸びしろを期待してしばらくは、初段ムラード - 二段中華 - 出力段JJ で行こうかなと思います。
<蛇足>
10年以上前、まだ名古屋に赴任してたころ大須で買ったUSBサウンドアダプタ、AUDIOTRAK MAYA EX5 QEがこの頃地味に大活躍しています。
手持ちのヘッドセットの端子がマイクとイヤホンが二股に分かれてるやつなのですが、会社から配られたシンクライアント端末にはイヤホン・マイク兼用の4極ジャックかUSBしか端子がありません。
しかしこいつを間に挟むことでUSB⇔二股端子のブリッジが可能となります。
あと、この頃はもっぱらアマゾンミュージックを聴いてるのですが(スマホにUSBのCタイプとAタイプを変換するアダプタを繋げば)音声をデジタル出力でき、KENWOOD DPF-7002に繋いで高音質のデジタル-アナログ変換をすることが出来ます。
何度も引っ越しをしたけれど、こんな活躍の機会が回ってくるとはー。捨てなくて良かった。