年度末で忙しく、またちょっと投稿の間が空いてしまいましたが、その間に季節はぐっと春に近づいてきました。
ついにコタツを片付けましたよ。(まだちょっと早かったかな)
春になると、ちょっと頭が暖かい人が出没するとかよく言われますが、最近それ系の本を読んだので紹介したいと思います。
「ボクには世界がこう見えていた −統合失調症闘病記−(小林和彦著)」
(副題を隠せば)何かライトノベル風のタイトルで、表紙もまぁ見ようによってはそんな感じなので、気軽に手に取ってしまったのですが、内容の「ガチさ」に後退りします。
う〜ん、これは「黒歴史ノート」そのものではないか……。
著者の小林さんのプライベートな部分が赤裸々に書かれているため、痛々しさに読み進めるのが困難に感じられることもしばしばでした。
しかしこの本がすごく興味深く、底知れない魅力を湛えていることは事実です。
それはやはり著者のキャラクターと読者(自分)が重なる部分が大きいからでしょう。
大卒、読書家、理屈っぽい、オタク、アイドル好き、お笑い好き、といったよくいるタイプの青年だったのです。(最近は「真面目系クズ」とか言われる)
なので読んでいて「自分ももしかしてこうなるんじゃ…」といった漠とした不安を煽られました。
それから、その頃(80年代)の大事件や社会状況なんかにもよく言及されているので、当時の雰囲気を知る良い材料になるのではないかと思います。
とは言え、この本の肝が妄想そのものにあることは間違いありません。
1986年7月19日の「おニャン子クラブコンサート」から始まり(よくこんな細かく日付を覚えてるな…)、7月25日にXデーを迎えるまでの狂気のクレッシェンドは「ひとりパノラマ島奇談」とも言うべき極彩色絵巻の相を呈しています。
特に挿入される「おニャン子アニメの企画書」がヤバイッッ!!
こっそりライトノベルや漫画を描いたことのある、後ろ暗い過去を持つ人は読まない方が良いかも知れません。
わたしはしばらく動悸が止まらず「救心」が欲しくなりました。
著者は最初の発狂後、釧路の病院に入院します。
その後も入退院を繰り返しながら、病気と向きあう姿がスパイシーに描かれていきます。
そして現在(2011年)に至るも、まだ社会復帰は叶わないという、やや厳しい現実で締めくくられます。
しかし、読みながらかなりモヤモヤするものが…。
病気のせいなのかも知れませんが、どうも自己愛、甘えが鼻についてしょうがない。
これについては同じ大学出身で、亜細亜堂の先輩である望月智充氏があとがきで苦言を呈しています。
それでやっと溜飲が下がりました。
ですがその事を差し引いても、偏見もあるであろう病気のことを、これだけ仔細に書き残して発表したということは大変勇気あることでは無かったかと思います。
この本を読んで感じたのは、創造性と狂気にはかなり深い関係がありそうだということですね。
それは、以下の言葉などにハッキリと言い表されています。
「この時点で、自分は少し精神状態が危ないのではないかと気づくべきだったかもしれないが、別に幻覚も幻聴もなかったし、創作者としてかつてない創作意欲に満ちている、幸福な状態だと思っていた」
「薬物治療は僕をおとなしくさせたが、同時に創作者として最も大事な想像力まで奪われたような気がしてならなかった」
創作にのめり込みすぎる余りおかしくなった芸術家なんて、古今枚挙の暇なくいますからね(ゴッホとか)
もしかしたら、クリエイターの成功とは、その狂気の部分を上手くコントロール出来るかにかかってるのかも知れません。
「正気にては大業成らず」といったところでしょうか。