素泊まりなので夕食は外で探しました。午後8時、山久デパートは眠っています。大堀中央の交差点からミニストップが見えたのでそこで明日の朝食用におにぎりを買い、部屋に帰ってフラスコに入れたウィスキーで一杯やりたかったので氷を買いました。
コンビニからほど近い場所に灯りを付けている日本料理、韓国料理、中華があったので、あまり悩まず中華レストラン「大勝」に入りました。洋食屋が途中から中華に鞍替えしたような店の作りで、ガラスケースにキープされたボトルも並んでいることから酒も出すようです。先客は工員風の坊主頭のお兄さんがひとりでした。レバニラ定食と瓶ビールをオーダーし、料理が出てくるまでの間ビールを飲みながら地デジが流れる液晶テレビを見ていました。しばらくすると料理が出てきて、それを食べながらビールを飲み、ビールを飲み終わると水の入ったグラスを手に取りました。視線をテレビに向けながら、お兄さんが店員を呼んでお勘定をする声を聞きました。テレビではお茶の効能を紹介するバラエティがやっていて、緑茶と玉露の違いなどを解説していましたが、どう違ったのかもう忘れてしまいました。食事が済むとレジで会計をして外に出ました。強い風が吹いていました。交差点のあたりで一度振り返ると、店は慌ただしくシャッターを下ろしているところでした。
月別アーカイブ: 2011年5月
RE:千葉旅行記 金谷鋸山‐青堀温泉
フロントで料金を払い、キーを貰い温泉の場所を教えてもらいました。夢にまで見た極上の黒湯。ヨダレは出ていなかったでしょうか? ところでビジネスユースかと訊かれたのですが、やはりこんな所、観光で来る人は少ないのでしょう。臨海部には新日鉄の大工場と、東電の火力発電所がある土地柄においては、ビジネスホテルとして成り立っているというのが本当のようです。
部屋に上がるとびっくり、ベッドがふたつです。もちろん利用はシングルなのですが…。
さて何はともあれ温泉です。すばやく浴衣に着替えて一階の浴場へ降りていきます。内湯は円形の建物にアーチ状の天井が付いたもので、昭和モダンの香りがします。浴槽は縁をレンガで覆ったレモン型をしており、源泉が中央の飾り石から注がれています。湯はまるで重油のように真っ黒で、透明度数センチといったところでしょう。湯の表には泡が広がっています。
湯船に体を沈めます。実に良い温度でした。熱すぎず、ぬるくもなく、いつまでも浸かってられそうな丁度良い塩梅です。すぐに足の指の股がヌルヌルするのを感じました。湯はなめると塩辛く、普段入り慣れている黒湯とは違いました。いずれにせよ今まで入ったどんな黒湯よりも濃い、最上の泉質であることは間違いありません。素晴らしい! 来たかいがあったというものです。
ここの温泉は宿泊客だけでなく、銭湯のようにお金を払って利用することもできるそうです。地元のおっちゃんが人懐っこく話しかけてくれました。今日保田まで行ったことを話すと、保田のそばに漁協のやっている美味い寿司屋があり、とにかく新鮮で絶品であると勧めてくれました。事前に知っていたら探したのにと残念な思いがしました。
さてこの温泉、露天風呂もあるのです。1.5米四方くらいの狭いコンクリ湯船ですが、そこに源泉が掛け流されています。外は湯温が熱めでこれもまた嬉しい。のぼせそうになったら縁に腰掛けて涼むのも気持ちが良いです。ただここは柵が低く、二階以上の客室からは丸見えになるというのがちょっと気まずい。
ゆっくり堪能してから上がりました。おかげで膝の痛みもだいぶ和らいだような気がします。
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大仏像は確かに大きかったのですが、ここに来るまでにあれだけ豪快な風景を見た後だと特にすごいとも思えず若干拍子抜けでした。それよりも広場の売店で買ったDAKARAの犯罪的な美味さときたら何なんでしょうか。この登山でここまで一滴の水分も摂っていなかったのです。危ないところでした。ジュースに癒されさらに山を下ります。
広場の前の階段を降り、薬師堂の前を通って頼朝が手ずから植えたという大ソテツのあり広場に出ます。そこから竹林を左手にして進むと心字池が見えますが、三つの赤い橋は掛かっていません。赤い観音堂を過ぎて、山門をくぐると緩やかな石畳の下り坂となりほっとします。
無字門を過ぎる頃には夕日の色もだいぶ濃くなっていました。田畑の中を通る遊歩道を歩きながら保田駅を目指します。右手に線路が見え、その向こうは海です。水田の脇を通ると蛙の鳴き声がします。絵に描いたような田舎の風景でした。
保田駅に到着すると「幸いにも」二〇分待ちで木更津方面に乗れました。海岸線沿いを三〇分ほど走って、今回の目的地青堀に到着しました。時間はすでに六時過ぎ、外は薄暗くなっています。駅の前を通る国道16号沿いの寂しい道を進みます。大堀中央の交差点そばにある「山久デパート」という屋号を掲げた、どう見てもスーパーにしか見えない建物の脇を通り過ぎると、まもなく本日の宿泊地「ホテル静養園」に到着しました。
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大切通しまで戻り、切通しを抜けずに途中の階段を登ります。そこから石切場跡に出れます。石切場跡はまさに「天空の城ラピュタ」の世界です。直線的に伐り出された岩肌の非現実感といったらありません。そこに蔦や灌木が枝を張る様に自然の生命力を見ます。ひるがえって、放置されて雨ざらし、朽ちるがままとなっている工事道具や哀れです。
北口管理所で拝観料六〇〇円を払い、日本寺境内に足を踏み入れます。すぐにバーミヤン石仏を彷彿とさせる百尺観音にド肝を抜かれます。ここから目を上げると地獄のぞきの嘴先が見えます。つまりここが地獄の底というわけです。観音像の裏を回りこむようにして展望台へ登っていきます。しかしここに来るまでに余りに歩き過ぎました。膝が笑っているような状態、一歩一歩登るごとに関節が軋むように痛みます。それでも歯を食いしばって山頂展望台に到着しました。さて地獄のぞきはやはり人気で人が群を成していました。柵に取り付き順ぐりに先を覗き込みます。まるで吸い込まれそうな眺めでした。頂上にはもう一つ展望台があり、そこからの眺めも見事なものでした。苦労して登ったかいがあったというものです。
日本寺には広大な敷地に無数の石仏と仏宇とがあり、それら全てを見てまわることはとても出来ません。それに加えて膝の痛みと疲労がピークに達していたので真っ直ぐ下山したかったのですが、日本寺のシンボルである座ったスタイルとしては日本一というの大仏像だけは外すわけにはいきませんでした。
展望台より保田方面の斜面を下って行きます。しかし途中の西国観音の付近で根を上げそうになりました。膝痛は登るより下るほうが痛いのです。座禅石で一歩も動けなくなり座り込んでしまいました。担架で運んでもらおうかなどと情けないことを考えつつ夕刻が迫りつつある空を眺めていました。しかししばらく休んでいると、次第に痛みが和らいできました。そこで下の大仏広場まで一気に下って行くました。杖を突き(幸い撮影用の一脚を携帯していた)膝をほとんど曲げずに歩く様は傍目からは不具者に見えたでしょう。
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傾斜はさらに険しくなります。階段はあるもののうっかりすれば果てしなく滑落してしまいそうです。それだけに眺めは素晴らしく、森とそれを貫いて走る館山自動車道、その背後の海岸線とを一望することが出来ます。
拷問とも思えるほどの階段を登り切り、ようやく山頂そばの展望台に出ました。登り始めてからおよそ一時間が経過していました。ここはちょっとした休憩場となっていて、ハイキングの一団が円形に並べられたベンチに腰掛けて昼食を摂っていました。素晴らしい眺望で、ロープウェイ駅を舳先として左右に広がる東京湾が見渡せました。あいにく若干霞がかかっていたのですが、左手にあるのが金谷港、右手に見えるのが保田の街並みです。
展望台から尾根伝いに山頂を目指します。とちゅうテレビ中継所のそばを通って一〇分ほどで山頂に到着しました。さて山頂なのですが、これが驚くほど何の感動もない。観測点が設えてあるのでそれと判るのですが、周囲に木々が茂り過ぎていて見晴らしが悪いのです。せっかくだからとここまで来ましたが、展望台で引き返すというのもアリだったかも知れません。尾根をさらに進んで林道口を経由し保田に出るルートがありますが、日本寺を見ておきたかったので引き返しました。
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お腹を満たしたところで鋸山を目指して動きます。浜金谷駅前の十字路を郵便局のほうに折れ、道なりに進むと小川があり、渡ると金谷の観光案内所が見えます。その並びの角に精肉店があり、薬局との間の道が山へ向かうルートなのですが、正直かなり分かりにくいです。実際迷ったのですが、そのまま道なりに進んでしまいますと「かぢや旅館」の前を通って元の国道127に戻ってしまいます。「あれぇ、おかしいなぁ」と頭をひねって地図を見つめてようやく気が付きました。
改めて精肉店の脇の道を進むとしばらくして内房線に突き当たります。その下をくぐるとすぐに山手の道と線路沿いの道と分かれるのですが、線路沿いを行くのが正解です。ところでここでタヌキを見かけました。残念ながら後ろ姿だけを見せてすぐに茂みに消えてしまったためシャッターチャンスを与えてくれませんでした。
線路沿いにしばらく進むと案内板が現れ、登山道と車力道に分かれます。これはどちらを登っても山頂に到達できるのですが、登山道のほうがショートカットになっています。車力道はもともと切り出した石を荷車に乗せて運んだ道だそうで、石切場を経由して見応えがあるそうです。
車力道を入ると最初は舗装道路なのですが、森林道になると粗い石畳となります。岩をくりぬいた切通しが随所に見られ、当時の鉱夫たちの苦労がしのばれます。
ふうふうと息を継ぎながら登っていると頭上からなにか梢を揺らす音が聞こえてきました。目を凝らすとなんと猿でした。なんという自然。
山の中腹あたりに大切通しがあり、山頂を目指す道と「地獄のぞき」のある日本寺へ向かう道に分かれます。まずは山頂を目指すことにしました。
ここからはジェットコースターのような壮観、絶景の連続で人生観が変わりそうになりました。まず切通しを抜けてすぐに高さ数十メートルもの垂直の断崖にブチ当たります。その時点で「おぉ」なのですが、その足下に水溜りのような黒い池があり、小さな緋鯉が泳いでいるのです。姿は見えませんが蛙がケロケロと鳴き、その音が岩壁に幾重にも反射して幽玄に響きます。まるでこの掌ほどの地所が周りの世界から切り離されて存在しているような不思議な感覚を味わいました。
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さて今回の旅の目的は温泉ですが、それだけでは勿体ないので観光もします。金谷港のそばに鋸山という山があり、低山ながらもハイキングで有名だそうなので登ってみることにしました。かつては採石場として有名だったそうで、現在はその跡地が観光地となっているそうです。港からも名前のとおりギザギザとした峰を見渡すことができました。
しかしその前に、腹が減っては戦はできぬということで昼食を摂ります。目ぼしは付けていました。港から徒歩一〇分程度のところにJR浜金谷駅があります。その駅のほど近くに「味はな」というラーメン屋があり、「海鮮とろろラーメン」という変わり種を出すことで知られています。ちょうど正午ごろに暖簾をくぐりました。迷うことなくとろろラーメンをオーダーします。しばらく経って出てきたのは普通の醤油ラーメンに碁石のような黒い固まりが乗ったもの。一見して、何の変哲もありません。この黒い固まりが乾燥アラメだそうで、スープと混ぜながら崩すとトロミが出てくるそうです。言われるがまま混ぜると海藻が表面に広がり、同時にスープにヌメリが生じてきました。まるでアンカケのようです。口に運ぶと広東麺よりなお粘る独特の食感でした。おいしかったです。
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まもなくアナウンスがあり、「しらはま号」はゆっくりと動き始めました。その時まるで海岸線のほうがベルトコンベア上を滑るように退いて行くような奇妙な印象を受けました。電車が並走する時に、一体どっちがどっちにに進んでいるのか分からなくなる時がありますが、フェリーは巨体ゆえにその相手が地面のようです。しかし次第に速度を増し、海面に水しぶきの轍を作って進みはじめると船は落ちつきなく小刻みに揺れ始め、デッキには強い風が吹付けてきました。
風に閉口して船室に入ると軽食や土産屋などが設けられていて、かなり充実した設備でした。
再びデッキに出ると海原に小石を巻いたように漁船の群れが見えました。およそ海路の中間地点で浦賀水道のど真ん中です。晴天ででしたが空気が烟っていたため、港からはおぼろげにしか見えなかった千葉側の土地も、この辺りから輪郭が現れてきました。
四〇分弱の短い航海を終え、フェリーは金谷港に着岸しました。センターはレストランと土産屋が入っていて、海産物、乾物、地の野菜、地酒などが売られていました。外に出ると、船着場と魚市場があり活気を感じました。
千葉旅行記 金谷鋸山‐青堀温泉
だいぶ間が開いてしまいましたが、ゴールデンウィーク中に訪れた千葉での出来事を記事にします。
今年はどこに行こうかと数週間前から熟考に熟考を重ねました。昨年は浜名湖、その前は羽田で稲荷巡りと、毎年思い出に残る旅をしてきました。白羽の矢が立ったのは千葉の富津市にある青堀温泉です。なんでもそこの黒湯は絶品らしいのです。また千葉というのも未踏の土地ですので旅行にはもってこいと思いました。
四月三〇日、良い天気でした。文庫から京急で久里浜へと向かいます。千葉へは久里浜港から出ているフェリーに乗ります。京急で八景以南に行くのはこれが初めてでした。八景を過ぎるとトンネルが目立つ様になり、ローカル線の趣が出てきます。
フェリーは一時間に一本の割合で出ています。駅からバスも出ていますが間があったので歩いてゆくことにしました。東口から出て左手方面に向かうと久里浜街道にぶつかります。街道は久里浜湾に注ぐ平作川に沿っているので、そのまま道なりに進みます。川は船着場になっていて、釣り船が停泊しているのが目に付きます。時折水しぶきをあげて船が河口へと降って行くのが見えます。
二〇分ほど歩くと海岸が見えてきます。心地良い海風が吹いてきて、磯の香りが鼻をくすぐります。見るとちょうどフェリーが港へ帰ってきたところでした。
乗り場でチケットを購入します。片道大人七〇〇円ですが、往復を買えば一二〇円得をします。エスカレーターで二階へ上がり、渡り廊下でチケットを見せてフェリーに乗船します。デッキに上がると上天気のためか多くの人が出ていて、中にはテーブルを囲んでビールを一杯という客の姿も見えました。
GW最終日
早いもので、今年のGWも今日をもって終わりです。
今年は千葉の青堀に温泉に入りに行ったり、草津温泉に行ったりして、それなりに充実した休暇を過ごすことができました。
近いうちにレポートできたらと思います。
明日からまたがんばろう。