RE:温泉狂の詩

 温泉ではなく、普通の銭湯なのですが、御徒町の「燕湯」をレポートします。
 その日の前日の土曜日に、わたしは休出で遅めの出社をし、七転八起しながら障害レポートを書いていました。
 一応完成し、ふと時計を見ると0時過ぎ。もう文庫に帰る電車はありません。仕方なく会議室のソファーで一晩過ごすことにしました。
 朝7時に目覚め、オフィスに鍵を下ろして向かった先がここ、燕湯でした。
 ここは朝6時から営業しているそうです、ありがたい。立派な建物ですが、その筈、「登録有形文化財」のプレートが誇らしく掲げてありました。
 脱衣場も年季が入っていて、飴色をした床は磨かれてピカピカと光っていました。ロッカーの上には常連さんのものと思しき銭湯用具がずらりと並べられ、いかにも下町の湯という感じを受けました。
 浴槽は岩風呂風に仕上げた広めのものとジャグジーのふたつで、富士山のペンキ画をバックにしています。もうコテコテの銭湯です。
 どちらも異常に熱く、45度以上あったのではないかとおもいます。しかし、じっと我慢しているとけっこう長く入っていられるものですね。上がって鏡を見たら真っ赤に茹で上がっていましたが。
 まだ早い時間だというのに結構な人の入りでした。温泉ではありませんが、たまにはこういうのもいいかも知れません。
 
 上がってから御徒町を散策します。早朝の御徒町はシャッターが下ろされ、普段の喧騒が嘘のように静まり返っていました。

温泉狂の詩

 七沢旅行の後、温泉欲が満足させられたかと言われれば、いいえまだまだ、いや増しています。
 この前、会社帰りに新馬場の「天神湯」に寄ったことを記事にしましたが、さらにレパートリーを増やしました。それが蒲田にある「蒲田温泉」です。
 京急蒲田で降り、第一京浜を川崎方面にしばらく進むと右手に消防署が見えてきます。その手前の道を右に折れると、「出村通り」という飲み屋街に入っていき、その中にひときわ怪しく、煌々と赤く光る鳥居のような看板が目に入ります。そこが目的地です。
 う〜ん、何というか独特の雰囲気のある建物です。カウンターの床は赤いカーペットで、タオルや石鹸等の用品はガラスケースに収めて陳列されています。何というか飲み屋を無理矢理銭湯に改造したかのような趣を感じました。
 さて肝心の温泉は黒湯で、半円形の浴槽を仕切りで低温槽と高温槽のふたつに分けています。デジタル表示の電光温度計が誇らしげに湯温を知らせてくれます。低温は42度、高温は45度くらいに調節されているようです。正直わたしにとっては低温でも熱いくらいなのですが、熱い湯好きの江戸っ子にとってはこれが低温なんでしょう。
 それからジャグジー風呂と電気風呂があるのですがこれは白湯です。どういう趣向か理解を許さないのですが、ジャグジーは水中ライトアップされています。 
 そしてなんともありがたい事にここのサウナはタダです。仕事帰りに入るサウナほど気持ちの良いものはありません。サウナでジリジリと汗を流し、水風呂に浸かってまたサウナ、というのを三回くらい繰り返してから最後は黒湯で締めるというのが定番メニューです。
 じつは蒲田温泉、もう五回くらい入っています。やはり場所が便利です。京急蒲田は快特が停まるので。駅の周辺には食べ物屋も多いので夕食もいっしょに済ますことも多いです。この前は「ヒマラヤカレー」という本格インド料理店に入りました。名古屋にいたころもカレー屋をレポしていましたが、どういうわけか定期的に食べたくなってしまうのです。
 
 先月末頃攻めたのが、京急大師線、産業道路駅から10分ほどのところにある「日の出おふろセンター」です。川崎大師からも近そうです。
 ここは黒湯がメインの土地柄には珍しく、淡黄色を帯びた食塩泉です。温泉は露天風呂のみに使われています。ほかは白湯ですが、大浴場とウォーキングジェットバスが一体化したものでかなりの広さがあります。
 それからここはサウナがタダです。しつこいようですがわたしはサウナがタダだと俄然テンションが上がるのです。ただここのサウナは、サウナと言っても「スチームサウナ」です。でもわたしはスチームサウナ嫌いじゃないですね。いやむしろ普通のサウナよりもマイルドな熱さなのでゆっくりとできて良いと思います。
 まぁ難点なのがかなりカビ臭かったこと。この環境じゃカビを養殖しているのに等しいので無理からぬ事かも知れません。わたしにとってはぎりぎり許容範囲でしたが、臭いでNGの人もきっと多いはず。
 
 昨日訪れたのですが、東急池上線池上駅から徒歩七分くらいの場所にある「桜館」です。
 ここは三階建てビルがまるごと銭湯という、普通の銭湯とスーパー銭湯の中間くらいのサイズの施設です。土日は朝10時からやっているので便利です。
 温泉は言うまでもなく黒湯で、源泉混ぜ物なしを誇らしげに謳っていました。確かに数センチ下が見えないほど真っ黒でした。
 かなり広い浴槽に使われていて快適です。温度設定はぬるめで40度くらいじゃなかったかと思うのですが、おかげでいつまでも浸かってられそうでした。
 露天風呂も存在しましたが、これは水風呂でいまの季節には厳しすぎました。露天の庭から二階へと上がる階段があり、登ってみるとスチームサウナがありました。瞬間喜色が浮かんだのですが、誰も入っておらず、施設も稼動していないようで冷たい部屋でした。浴場の吹き抜けの上部に位置し、窓ガラス越しに浴場が見下ろせました。
 ここには普通のサウナもあって百円の追加料金で入れるのですが、のんびりもしていられない用事があったので今回は利用しませんでした。他にも屋上に露天風呂などが存在したようですが、未消化のまま店を後にすることになりました。残念! 次機会があればリベンジしたいです。
 
 昨日はちょっと遅めの花見で、洗足公園で葉桜を眺めました。その後、友人宅で飲んでいたのですが、夜も深まり前後も分からなくなるほど酔ったところでどういうわけか銭湯に行くことになりました。東雪谷にある「稲荷湯」です。
 こじんまりとはしていますが、かなりこざっぱりとした気持ちの良い施設でした。押しているせいか客も少なく、ゆったりした気分が味わえました。
 浴槽は小ぶりな黒湯と、白湯のバイブラ、普通の湯、水風呂が並んでいます。温泉は加水してあるのかどうか判りませんが、かなり薄い色でした。
 ここにはサウナもあるそうですが、それはタダではなく、代わりにドライヤーがタダでした。多くの銭湯ではせこくドライヤーを使うのに二十円などと料金を徴取するのですが、ここは備え付けのドライヤーを自由に使えます。スパミシュランでも言われてましたが、「キラリと光る何かがある」銭湯だと思いました。

RE:東丹沢 七沢温泉の旅

 受付で入湯料千円を払います。日帰り入浴用の浴室までは廊下にテープが張られていて、そのガイドに沿って進みます。着いた先は露天風呂、ではなくその隣にある外気浴の浴室でした。ウェブサイトでは露天風呂が日帰り入浴用と紹介されているのですが、今日はどういうわけかやっていなかったようです。少々ガッカリしつつ、浴室へ。大きな岩風呂がひとつあり、どういう趣向か判りませんが蘭の鉢植えなどが周りに並べてありました。シャワーとカランが浴室の隅に備え付けてあって、山登りで書いた汗を流してから岩風呂へ向かいます。湯に入ると確かにアルカリ湯らしく肌がヌルヌルとします。ここは広沢寺には及ばないものの、pH9.5もの強アルカリ泉です。しばらく温まってから上がって、カランで背中を流すとまだヌルヌルする…。どうやら湯船だけではなくカランにも源泉が使われているようです。入っては上がり、入っては上がりをきっちり一時間ほど楽しんだ後浴室を出ました。湯船が一つきりなので、正直間が持たなかったのですが、そこは貧乏人、払った分だけは使おうという意地です。
 上がって体を拭いていると皮膚がつっぱるというか、ガサガサする感じがしました。いかな天然温泉とはいえ、これだけの強アルカリ、肌に良くないようです。ハンドクリームを顔に摺り込んで念入りにケアしました。
 
 七沢荘を出ると外はすでに日が落ちて真っ暗です。七沢温泉入口から出る、六時二八分の厚木行バスの時間が迫っていました。これを逃すと次の便は一時間以上待たなければなりません。ふうふうと息をつきながら十分ほどの距離にあるバス停へ急ぎ駆けて行きました。
 この時間、温泉街はすでに眠っていました。観光案内所も地酒を売っている土産物屋も暖簾を下ろしていました。停留所は暗闇のなかに沈むようにして立っていました。わたしは凍える思いでバスを待ちました。バスがやってくる少し前に女性と思しき影が少し離れて立ち止まり、バスが到着すると、ドアはふたりの影を飲んで動き出しました。

RE:東丹沢 七沢温泉の旅

 日向薬師の境内には出店が出ていて、お土産物や甘酒を売ったりしていました。しかし境内の門限は五時だそうで、そろそろ閉門時間が近づいていました。急ぎ本堂に回ります。しかし運悪く改修工事中で、近くに寄ってみることは出来ませんでした。 本堂の前庭にある池には鶴の人形が配置されていてシュールです。鐘の前を通り、裏道へと通じる小径を通ると、虚になった大木の中に小祠が建ててあるのが見えました。そばには「南無虚空蔵菩薩」の旗がひらめいていました。
 目的を一応果たしたので、黄昏の光のなかを七沢温泉目指して一路下山します。薬師からは舗装道路なので実に楽です。お陰で日がおちる前に温泉郷へ到着できました。
 出てきた場所は午前にバスで通った玉川館のそばです。事前にピックアップしていた日帰り入浴可の旅館は、ここ玉川館と「福松」それから「七沢荘」です。もうちょっと温泉街を見物したかったので玉川はパスして福松に向かいます。しかし福松はちょっと年季の入った建物でどうしようかと迷ってしまいました。ちょうどその真向かいにイノシシを飼っている施設があったので、恐る恐る見物などしつつ逡巡します。取り敢えず七沢荘まで見て判断しようと、足を伸ばしますと、かなり新し目な建物で好印象です。結局時間も押しているということもあり、そのまま七沢荘に入ることにしました。

RE:東丹沢 七沢温泉の旅

 大釜弁財天の傍のチェックポイントに戻った頃には、およそ一時間ロスしていました。あまり遅くなると七沢で温泉に入ってから本厚木まで帰る道が不安になります。心中穏やかでなく日向山の斜面に挑みますが、これがキツかった。急な斜面を山道は蛇のようにクネクネと折れながら尾根まで続いてゆきます。尾根に出たところで第二のチェックポイントに行き当たりました。ここで道は日向山山頂を目指すルートと七沢温泉郷へのショートカットとに分かれます。道草を食ったため時間が押していたので、ショートカットに心が傾きましたが、せっかくここまで来て登頂しないのもやはり勿体無く思えたので、当初の予定通り山頂を目指しました。
 この辺で今日初めての登山者と遭遇しました。尾根伝いを歩いていたようです。リュックを背負い、上半身はランニング姿になっていました。たしかに今日は快晴、絶好の登山日和で無理からぬ事であると、軽く会釈を交わしつつ考えました。
 山頂に至る道は狭く、木の根がはびこる険しい道でした。単調な道をしばらく登ると、ふっと開けた場所に出て、そこが頂でした。標高404メートルではやはりそれほどの充実感はなかったです。
 山頂からは行きにバスで通りかかった、リハビリセンターのビルが見下ろせました。その向こうの厚木の街は霞にけぶっておぼろにしか見えませんでした。つつましやかな祠があり、その両側に脇仏の如く日向山山頂の標識と、ちょっと新し目な「ナイスの森」の説明文が立っていました。
 説明によると、日向山の斜面の一部を「ナイス株式会社」という福々しい名前の会社が買い取り、自然保護に務めているのだそうです。そのお陰でわたしの持参した地図にある、山頂から日向薬師に向かうルートは私有地となりロープが巡らされて通れないようになっていました。微かにいら立ちを覚えたものの、仕方が無いので迂回路を行きました。
 下りの道は打って変わって歩きやすくなります。周囲の森には椿の花が咲き乱れて綺麗でした。薬師のほど近くまで来たところで梅園に足を踏み入れました。本堂裏の「日向梅園」でした。時期はまさに見頃と言ったところで、百本もの梅の花が咲き競う眺めは桃源郷という形容がぴったりです。ピクニックをする人の姿も見られました。

RE:東丹沢 七沢温泉の旅

 大釜弁財天を過ぎたあたりに第一のチェックポイントがあり、ここからいよいよ山道なのですがうっかり見落とし、別の道に入り込んでしまいました。というのもそちらが舗装道路なのであまりに歩きやすかったのです。
 気付かずにしばらく進むと道の脇に熊出没注意の看板が立っていました。いよいよ山奥に入ったという感じです。いま熊に出くわしたらおそらく冬眠明けで気が立っていて大変でしょう。急にひとりでいるのが心細くなり足を早めました。
 何時まで経ってもチェックポイントが見つからないので、変だな〜と思っていると、眼前にバンガローの集落が現れてきました。七沢弁天の森キャンプ場でした。地図で確認すると日向薬師とは別方向です。また戻らねばならぬのかと思うと、急速に力が落ちるのを感じました。
 とにかく腹が減っては戦はできぬです。腹ごしらえをしてから考えることにしました。行きがけに買った助六寿司を炊事場のテーブルの上に開き、遅めの昼食を摂りました。
 お茶を飲み、一息ついてからまじまじとキャンプ場を見渡すと、実に気持ちの良い所であることがしみじみ感じられました。キャンプ場全体が沢へと続く斜面にあって、バンガローは背の高い杉林の中に配されています。木々は青空に向かって定規を当てたようにスックと屹立しています。建物はまだ建てられて間もないのか、いかにも清潔そうで、快活な雰囲気に溢れていました。道も敷石でキレイに舗装されていて、人気のないことが却って奇妙な感じを覚えました。夏に来れたら実に楽しいだろうと思いました。また来れたらいいなと惜しみつつキャンプ場を後にしました。

RE:東丹沢 七沢温泉の旅

 大沢川沿いを上流目指して進みます。すこしして「ますや」という店の傍を通りかかりました。釣り堀が付いた川魚料理家でした。大沢川で捕れた鮮魚を提供するものと見えます。ますやを限りとして商施設は絶えるようです。右手には川を隔てて田畑が広がっており、左手には山の斜面が迫っています。
 その先、道は二股に分かれるので、地図を見て山側を選択しました。ここからは緩やかな傾斜が続きます。道路は舗装されているので歩きやすいです。道からは右手に常に沢が見下ろせました。清い流れに心を奪われます。見ごたえのある滝に突き当たるたびにわたしは沢へと滑り降り、しぶきに向かってシャッターを切りました。時には倒木なんかが跨っている沢は、人手の入らない無垢な自然の趣があります。注意して樹の根元を見ると、狸のものか狢のものかまったく同定出来ませんが、野生動物のものと思しき糞が落ちているのが確認できました。
 ハイカーの姿は見ませんでした。シーズンによってはロッククライミングをする客もいるそうですが、時期ではないようです。「なめり岩」という巨大な一枚岩が沢を隔てて対岸にあり、そこだけ山が地肌を晒しているのですが、ロッククライマーにとっては格好の練習場になるそうです。
 なめり岩をすぎてまもなく、大釜弁財天に辿り着きます。釜のような形をした滝壺を祭ったものだそうです。抉り取ったような淵には透き通った水が湛えられていました。夏であれば飛び込んで泳ぎたくなるような眺めです。這い上がるのは至難の業でしょうが。

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RE:東丹沢 七沢温泉の旅

 正午ちょうどに九番からバスは出発しました。神奈中バスはパスモが使える! これば便利です。降車駅が近づくにつれ「小銭足りるかな…」などと不安な顔で財布を覗く必要がありません。
 さてバスにはリュックサックを背負ったハイカー風の客が何人か乗っていました。お仲間に違いありません。車窓の景色は市街地から住宅街、のどかな田園風景へと移り変わって行きます。三十分ほど揺られていると「歓迎 七沢温泉郷」と書かれた鳥居のような看板が見えてきました。にわかにテンション急上昇です。リハビリセンターの前を通りすぎたあたりで、右手に七沢森林公園の白いアーチ橋が目に入りました。この付近に三叉路があり、右が目的地である広沢寺温泉、左が七沢温泉へ続くのですが、バスはいったん七沢温泉を経由します。七沢温泉地の奥のどん詰まりにある玉川館の前まで来て、ぐるりと巡回するのです。ここでほとんどの客が降りてしまいました。元の道に戻り、大沢川沿いの道をしばらくくねくねと進むとついに終点、広沢寺温泉に到着しました。バスは広沢寺温泉唯一の湯宿である「玉翠楼」の前、砂利を敷いた庭のような場所に乗り付けました。
 広沢寺温泉は日本でも有数の強アルカリ性温泉で、そのペーハー値は10.3。洗濯用石鹸くらいの強度です。これにより肌の角質が溶かされてスベスベになると謳われています。
 ところで終点の降車客はわたし一人だけでした。「なんか変だな」と思って受付に回ってみると、なんと『本日の入浴は終了しました』のメッセージが…。地震の影響かも知れませんが、営業時刻の変更などウェブサイトには何も告知されていなかったので軽く憤りを覚えました。と同時に、事前に電話確認は必須だなと反省させられました。
 仕方が無いので広沢寺を見物などして心を落ち着けました。境内は手入れが行き届いていましたが、特に名刹古刹という訳でも無いようなのですぐさま飽き、予定を早めて日向薬師ハイキングコースを行くことに決めました。