RE:中伊豆旅行

 一応の目的は達したので、温泉街に引き返そうかと思いましたが、時間もまだ正午まえなのでもうしばらく踊子歩道を先に進むことにしました。
 踊子歩道は二階滝、平滑の滝、宗太郎杉林道を経て河津七滝に至るハイキング道です。しかし後から考えるとこれは冒険でした。足元の悪い雪道を歩くのは普段以上に体力を使うものです。
 つづら折りの坂を下り、下田街道を横切ったあたりで地面の積雪はだいぶ少なくなり、代わりにぬかるみの道となります。梢からは溶けた雪がまるでミゾレ混じりの雨のように絶えず降り注ぎ不愉快極まりなかったです。こんな悪路は、やはり人気がないのか、誰ともすれ違わず、ただやたらと意固地な気持ちになって、わたしはひた歩きました。ただ途中の清らかな沢の流れと、清潔そうな山葵畑が足をその場に引き留めました。
 宗太郎杉林道の辺りまで来ると、やっと道もまともになってきます。杉並木を抜けたると、左の山の手に打ち捨てられたかのような集落があったのが不気味でした。めちゃめちゃに壊れた車が道の脇に放置されていたのも、何かいわくがあるように感じられました。
 猿田淵に寄り道したあと、やっと河津七滝の第一の滝、釜滝に到着しました。ここまで誰ひとりとして観光客の姿を見なかったのですが、ここに来てやっと発見。なんだかほっとしました。しかしどういうわけかカップルが多い。その理由は三つ下って第四の滝、初景滝に着いて判りました。それは踊り子と学生のブロンズ像、そして顔を嵌める記念撮影パネルの存在です。そのあいだをカップルたちが入れ替わり立ち替わりしていました。
 しかし、踊り子と学生は結ばれたんだっんでしたっけ。いや、たしか悲しい別れをしたはずです。彼らはそこのところ、どう考えているのでしょうか?
 
 最後の、そして最も大きな滝が「大滝」です。滝壺の付近まで降りるには天城荘の脇を通っていきます。途中には「天国めぐり」の看板が。してみると、ここは天城荘の敷地なのかしらとふと考えます。下の流れには「河原の湯」が見下ろせました。さすがにこの時期、誰も入ってはいませんでした。しかし、ふだんでも上から丸見えではないかと思えてしょうがないです。水着でも着て入るんでしょうかね?
 踊子歩道とは大滝でお別れです。大滝入口バス停からちょうどよく修善寺に戻る便に乗り込みました。天城峠で降りてから四時間あまりが経過していました。歩き詰めで心底くたびれていました。