楢山節考

 (ああ、表紙に思いっきり図書館のシールが…)
 
 深沢七郎の「楢山節考」を読みました。
 姥捨て山の話なのですが、その他にも嬰児殺しやら、村八分やら暗い因習濡れの寒村の生活が描写されます。
 田舎とはここまでハードなものなのか……。
 
 しかし、内容のハードさに比べて作品の雰囲気じたいはそれほど重く感じませんでした。
 ひとつはもうすぐ姥捨て山(楢山)に連れていかれる、おりんが嫌がってはいないからでしょう。むしろ積極的に楢山参りの準備をしています。
 山に捨てられて、孤独な死を迎えることが「楢山参り」というオブラートに包まれて、なんだかとても良いことのように語られているのです。
 とてもちぐはぐで、目眩を起こさせるような話ではないでしょうか。
 
 それから村民たちの訛り言葉と、そして文章のところどころに挿入される「楢山節」の素朴な味わいが印象を幾分やわらげている、ということもあります。
 作品の大きな魅力であり、村民への共感を感じさせます。
 なので作品の主題は前近代的な寒村の風習を告発することではないです。
 
 では深沢は何を言いたかったのか? なんでこんな話を書いたのか?
 正直よくわかりません。
 この本には、「楢山節考」の他に三編の作品が収められているのですが、「白鳥の死」という作品の中で、おりんにはイエスと釈迦が入っていると書いてある部分があります。
 ということは、棄老の習わしは、必ずしもイヤイヤではなく、自己犠牲の精神があったのだと言いたかったのかも知れません。
 わたしにはこの作品は、棄老が棄てる者と棄てられる者のいずれにとっても幸せであったかも知れない、という可能性を文章のうえで実験した、ように思えます。

文庫の秋

 金沢文庫駅の構内にある物置?のような建物に絡まっている蔦が、色とりどりに紅葉して綺麗でした。
 思わず立ち止まって、何枚もシャッターを切りました。

サイトちょっと改装

 今日は奇跡的に休みがとれたので、サイトをちょっと模様替えしました。
 とは言っても壁紙を替えただけですが…。
 
 中身のほうが結構変わったのです。
 ひとつは、データベースをMySQLからSQLiteにしました。
 違いを簡単に説明すると、MySQLはホームページからのデータ要求を常に立ち上がって待っています。
 つまり応答が早いです。
 でも、SQLiteのほうは要求があった時だけ立ち上がって、普段は動いていません。
 なので遅いのですが、その代わりいつも立ち上がっていないのでコンピュータに負担をかけないのです。
 組み込み機器向けのデータベースですね。
 このサイトを近い将来、玄箱に移動させようと思っているのでそれに先立つ準備といったところです。
 
 それからこれもあまり意識されないのですが、ページの文字コードをシフトJISからUTF8に変えました。
 世の中の趨勢としてそういうものがあるのです。
 ただ、これはちょっと手こずりました。
 UTFにはファイルの頭にBOM(バイトオーダーマーク)というデータを付加するものとそうでないものがあるのですが、一見して付いているのかそうでないのかは分かりません。
 しかしこのBOMはプログラムの実行を妨げたりと、色々悪さをしてくれます。
 今日はそれに気づくまでドハマりでした。
 
 そういえば、この前のiT unesで再生できない曲がある問題ですが、あれもデータ自体に問題があるわけではなく、タグが問題でした。
 いちどタグを削除して、ふたたび付け直したところ、ちゃんと聞けるようになりました。
 メタデータには要注意。

RE:玄箱

 忙しいながらも徐々に環境構築を行っていました。

 色々なPCに散らばっていたデータを玄箱上に集約。約120GBありました。
 しかしまだ90%以上余っています。なんたる広大な領域……。
 
 そうなると、ハードディスクの故障によるデータ喪失が怖いです。限りなく怖いです。
 そこで玄箱に繋いでバックアップをとるUSBの外付けハードディスクを用意しました。
 ディスクはIDEの500GBのものが手元に余っていたので、このたび購入したのはハードディスクケースだけです。これも玄人志向のもので、値段は二千円くらいでした。
 今日はバックアップに半日くらい掛かりました。まあこれは最初だからで、あとは差分を入れていくのみとなるので、それほど掛からないはずです。
 
 それからmacには「タイムマシン」といういかにもジョブズが好きそうな大袈裟な名前のバックアップ機能があるのですが、そのデータの保存先も玄箱上にしました。
 しかしここで問題が。ネットワークがあまりに遅すぎてタイムマシンが何時まで経っても終わらないのです。
 ネットワークには秒間10メガ、100メガ、1000メガビットと十倍ずつ早くなる規格があるのですが、うちでは100メガ(とは言っても本当に100メガ出るわけではない)の環境でした。
 そこでネットワークカードとハブを買い換えるハメに。本当はケーブルも替えなければならなそうですが、ちょっと様子をみてからということに。
 カードは蟹のマークのリアルテックのチップが乗ってる安いやつ(これも玄人志向!) ハブはバッファローの1000BASE対応ではいちばん安いやつです。
 正直そんなに変わるものかねと思っていたのですが、これが劇的に早くなりました。10倍とまでは言いませんが数倍早くなったのは確かです。
 タイムマシンもサクサク動くようになり、ネットワーク越しの操作もだいぶ快適になりました。
 これは良い投資でした。
 
 いまは音楽データもすべて玄箱上に移動し、iTunesサーバを動かしてパソコンからストリーミング再生するという聴き方をしています。
 わたしだけが、一台のパソコンでそうすることにあまり意義はないのですが、玄箱の有効活用ということで。
 しかしそこで、一部の音楽が聴けなくなってしまうという問題に遭遇してしまいました。特定のアーティストの特定のアルバムの曲だけがなぜか聴けないのです。
 ローカルでは普通に再生できるので奇妙としか言いようがないのですが、いまのところ限定されているのでモヤモヤしますがそのままにしています。
 う〜ん、でもなんでだろう?

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牛腸茂雄

 う〜ん、またすこし更新に間があいてしまいました。
 ここ何週間かは、土曜に休出していて、時間に余裕が無いのです。
 12月に製品の出荷が予定されていて、いまは忙しさのピークです。
 その忙しさの合間に読んだ写真集を紹介します。
 
 「牛腸茂雄作品集成」
 
 牛腸(ごちょう)茂雄は83年に36歳の若さで早逝した写真家です。幼い頃に胸椎カリエスを患ったせいで、子供くらいの背丈しかなかったそうです。
 この作家の存在は、まえに紹介した「日本写真集史」で知ったのですが、その写真を見たときには驚きを覚えました。
 というのも、代表作「SELF AND OTHERS」に収められた写真のほぼすべてが、「日の丸」と言われる人物を画面中央に置く構図をとっていたからです。
 「日の丸」は素人が陥りやすい陳腐な構図とふつうはみなされていて、避けるものなのですが、あえてそれをしている。
 それでつまらない写真なのかというと、決してそんなことはないのです。むしろ率直な態度が胸を打ちます。陳腐の代表とされている「日の丸」を武器にしてしまっているのです。
 巻末にはセルフポートレートが。しかしその写真のなかで彼は微妙に画面の中央からは逸れているように見えます。
 
 牛腸は死後しばらく忘れられたそうですが、90年代に再評価がはじまり、2000年に「SELF AND OTHERS」を題材にした映画が作られ、04年に回顧展とこの「牛腸茂雄作品集成」の出版によって決算がおこなわれたようです。
 「牛腸茂雄作品集成」には「SELF AND OTHERS」の他にも、生前に刊行された「日々」、「見慣れた街の中で」の二作品、それから遺作を集めた「幼年の『時間』」、ロールシャッハ、マーブリング作品を集めた「扉をあけると」などが収められ、生涯の活動を網羅的にまとめたものになっています。
 とはいえ表紙からして「SELF AND OTHERS」を意識したものになっていて、子供の写真家というイメージが押し出されていますが、わたしはささやかに異議申立てたい。大人の女性もよく撮れています。とくに「見慣れた街の中で」
 
 これ、図書館で借りたのですが、借りたは良いものの、あまりに時間がなかったものでいちど延長し、それでも読む時間がなかったので結局は通勤の電車内で目を通したのです。もっと紅茶でも飲みながらゆっくり観たかった……。

除湿機

 引越してから一ヶ月ほど経過しましたが、新居の色々と良い点・悪い点が目についてきました。
 特に感じるのは、湿っぽいということです。
 三方を山に囲まれた土地なので、湿気が溜まりやすいのではないかと思います。
 そのせいで衣類がすぐによれよれしたり、乾かすつもりで椅子の背に掛けておいたタオルがまったく乾かないうえ、臭くなってたりするのです。
 また、誉められたことではありませんが、平日は布団をあげるのも面倒でよく万年床にしてしまいます。
 そうすると夜、床に入るときにやけに湿っぽくて冷たく、寝苦しい思いをするハメになります。
 
 このあいだ湿度計を買ってきて部屋の湿度を調べてみました。
 すると70%と出ました。
 これは室温が20度くらいなら、ぎりぎり快適と言える数値だそうです。
 しかし、雨の日に部屋干しなどすると湿度は80%を超えてしまいます。
 まったく乾かない上、不快なことこのうえありません。
 
 そこで、思い切って除湿機を買いました。
 パナソニックのF-YHFX120という機種で、かなりデカイです。重さは10kg以上あります。
 しかし、強力な除湿能力を持つと評判だったので。それから、夏冬つかえるハイブリッド式がよかったのです。
 お値段四万円ほどしました。われながら思い切ったなぁ……。
 色は部屋に合わせて、シャンパンです。
 
 使ってみた感想ですが、なかなか良いです。
 付けっ放しにして会社へ行き、帰ってきたら3.2Lのタンクが満水で止まっていました。
 湿度は50%に落ちていました。
 みるとハンガーに掛けたシャツもパリっとなっていていい感じです。
 
 それから、購入前に読んだレビューで見た一文、
 「畳の部屋で使うと、畳の新しい時の匂いがする」
 実はこの一文にかなり強烈に背中を押されたのです。
 実際に試してみました。
 「おーこれは」
 本当に畳の匂いがしてきました。まるで旅館のようです。
 布団もフカフカして、本当に快適です。
 これは良い買い物をしたと満足しています。