最近あった奇妙な出来事です。
昨日、仕事から帰ってくると、アパートの一階にある集合ポストに身に覚えのない錠がしてありました。わたしは普段は錠をしていないので、びっくりしてしまいました。
これでは郵便物を取り出せないので、あわてて大家さんに相談しました。
大家さんはけっこう齢のいったおばあちゃんで、訛もきつく、言ってることが良く分からないことがあります。
案の定勘違いして、わたしが鍵を無くして困っているものと思ったようです。
しかし、元から錠などしていなかったことをなんども説明するとやっと理解したようで、非常におどろいていました。
しかし外すには鍵屋を呼ぶしかなく、すぐには無理だしお金もかかると言われてしまいました。
それで自分でやると宣言しました。悪戯でやられたような気がして、頭に血が上っていたのです。
工具箱から棒ヤスリを取り出してきて、錠の腕をゴリゴリ削り始めました。意外と柔らかくて五分ほど削っていると、肉がかなり薄くなってきました。最後は大家さんにクリッパーを出してもらって、それでパチンと切り落としました。
しかしそれだけやって開けたポストの中にはチラシが一枚入っているだけでした。
そのうえちょっと力みすぎてポストの錠を掛ける把手の部分を壊してしまい、けっきょく業者に来てもらわなければならなくなってしまったのです。
今日、帰ってきて見ると、把手の部分が修理されていました。
大家さんに訊くと、鍵屋がすぐに来てくれたということです。
それから事件の「真相」を教えてもらいました。
今朝、わたしの上の階の住人が、大家さんを訪ねてきたそうです。ポストの錠が無くなっているという相談でした。
つまり上の住人の錠が、どういう訳かわたしのポストに取り付けられていたのです。
どうしてそうなったのかは、本当の謎です。
大家さんが言うには、上の住人はロックせずに錠を把手に引っ掛けたままで出掛けていたそうです。それが何かの弾みで落ちてしまい、それを見つけた誰かが親切のつもりでわたしのポストに掛けたのではないか———、ということです。
とても納得できませんが、わたしの咎ではないことがはっきりしたので修理費は払わなくても良いことになりました。
しかし考えれば、時間が解決してくれた問題だったのかも知れません。