クリス・スタンドリング

 連休の間にAmazonで注文していたものが次々と届きました。
 まずはこれ、クリス・スタンドリングのCDです。
 左の渋いオジさんのジャケットのほうが「ラブ&パラグラフ」右のちょっとHなジャケットのほうが「ソウル・エクスプレス」です。
 
 昔はよくCDを買っていましたが、最近はとんと買わなくなりました。趣味としてのオーディオ、音楽鑑賞に「疲れ」てきたのです。
 学生の頃はハードロック、モダンジャズ、ファンク、フュージョン……なんでもござれだったのですが、今ではラックにうず高く積まれたこれらのCDや、ハードディスクに目一杯詰め込まれたmp3が疎ましくてしょうがありません。
 今では音楽は聴かないか、聴くとしてもイージーリスニング系のインターネットラジオをBGM代わりに垂れ流すくらいです。
 
 よく聴くラジオがSky.fmのスムースジャズのチャンネルなのですが、これは良いです。チューンを合わせると部屋が高速道路のSAPAに変わります。
 スムースジャズというのは、言うまでもなくジャズの一種なのですが、伝統的なジャズのようなコースティック楽器ではなくエレクトリック楽器を使用し、最近のポップス同様にコンピュータの打ち込みを多用します。
 またジャズにはつきもののアドリブ演奏はほとんどしないようです。
 曲調は滑らかでクリーンです。
 耳障りの良い音楽が水のように流れてきて、流れ去って行きます。一つ一つの曲に特徴が無いのです。
 昔なら「軽薄」と思ったかも知れませんが、今ではこの軽薄さがとてもありがたいのです。
 
 思えば以前に聴いていた歌は「自分を変えろ!」だの「腐った世の中をぶっ壊せ!」だの「アフロの本能で女を狩れ!」だのというものばかりでした。
 あまりにメッセージ過剰でした。
 たとえ英語にせよそんな歌詞を四六時中聴いていたらくたびれます。
 あるいはインストロメンタルだとしても、抑圧された黒人の怒りが滲んだような音楽で、自然と脈が早くなり、頭に血がのぼるようでした。
 
 クリス・スタンドリングの存在を知ったのはこのSky.fmのおかげです。
 しかし、最初は全然何も感じませんでした。おそらくあまりに滑らかすぎて、精神に作用するものがなかったのだと思います。
 最初に彼の曲を耳にしてたぶん一年以上経ってから、「リキッドソウル」という曲がとてもいい曲で、無意識のうちにその曲がプレイされるのを期待していることに気がついたのです。
 演奏者の名前を見てみると、「クリス・スタンドリング」とありました。
 それから注意して彼の曲に耳を傾けると、どれもとても素晴らしいものばかりだったのです。
 柔らかいギターの音色、暗いがソフトな曲調を知らないうちに大好きになっていました。
 押し付けがましさを排した、職人芸の世界です。
 「リキッドソウル」は「ラブ&パラグラフ」に入っています。
 「ソウル・エクスプレス」収録の「カレイドスコープ」はとても美しく、人に勧めたくなる曲です。