RE:夢を諦めきれない男たち

 ちょっと気になったことを補足します。
 リップスもロブもユダヤ人です。
 特にリップスの両親は息子を厳格に育て、彼の夢には理解を示さなかったそうです。
 リップスはステージ上では非常にクレイジーなキャラクターなのですが、実際はとても真面目な性格で、映画の中でアルバムの制作費を稼ぐためにヤクザな電話勧誘事務所でアルバイトをするシーンがあるのですが、彼にはつまらない商品を騙して売りつけるような真似はできず、結局辞めてしまいます。
 夢がロックスターなので奇妙に見えますが、彼らが三十年も諦めずにやってきたのも、この真面目さゆえではないでしょうか?
 それはユダヤ人特有のものなのかも知れませんね。

夢を諦めきれない男たち

 以前知人から映画の株主優待券を貰い、しばらく忘れていたのですが、その期限が今月末に迫っていました。
 しかしこの映画館、一日に二タイトルくらいしかやらない(しかもマイナーな作品ばかり)ので、わざわざ街まで出る気にはなれないでいました。
 そもそもわたしは映画というものをほとんど観ないのです。
 しかしふと上映スケジュールを見てみると、興味を引くタイトルが。
 「アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち」
 なんだこりゃ……?
 興味をそそられて、ようやく重い腰を上げ、何年ぶりかに映画館に足を運んだのでした。
 
 映画はカナダの売れないロックバンド「アンヴィル」を二年くらい追ったドキュメンタリーでした。
 売れないロックバンドなんてそれこそ砂の数ほどあるのですが、彼らがそんじょそこらの「売れなさ」とは訳が違うのは、一時はボンジョヴィ(超有名)、ホワイトスネイク(まあまあ有名)などと肩を並べる存在だったということです。
 映画の冒頭で、八十四年に日本で行われた「スーパーロック84」で演奏する彼らの姿が映し出されます。これには当時のメタル少年は頭を掻いたのではないでしょうか。
 ボンジョヴィが栄光の道を進むのとは対照的に、アンヴィルは坂道を転げ落ち、バンドだけでは食っていけずに、給食の配達人や、建築作業員に身を落とすことになります。
 しかし彼らは、冴えない仕事に身をやつしながらも決して夢を諦めていなかった! 五十代になり、頭はハゲかかってもバンド活動を続けていたのです。バンドを結成してから三十年の月日が流れていました。
 そんな彼らに対する家族の反応はさまざまです。主人公の一人、ロブの姉は「とっくに終わってる」
 でも彼の妻は夢を諦められない夫を擁護します。
 
 ところが降ってわいたようなヨーロッパツアーの話が舞い込んで、事態は急変します。一ヶ月以上に渡ってヨーロッパ全土を巡るツアーです。彼らは幸運の予感に胸を震わせ、それぞれ長期休暇を取って、意気揚々海を渡ったのでした。
 しかし、そこで待っていたのは失望の連続でした。少ない客入り、払われないギャラ、マネージメントの悪さ。苦い気持ちでツアーを終えたのでした。
 「だが、今年はなにかがいつもと違う」と、ツアーの勢いを駆って、彼らは新しいアルバムの製作に乗り出します。
 しかしそれに必要な経費が二百万。
 普通の感覚ではそれほど目を剥くほどの大金でもありませんが、ふだんからカッツカツでやってきて、家のローンも残っている彼らにはそれを捻出する余裕はありませんでした。
 それを救ったのが、もう一人の主人公、リップスの姉です。彼女が涙ながらに弟の夢を応援する姿はこの作品のハイライトと言えると思います。
 そんな家族愛に支えられて完成したアルバムが、アンヴィルとして通算十三枚目となる、「This is Thirteen(邦題 夢を諦めきれない男たち)」でした。
 
 リップスとロブはこのアルバムをショップに並べるために渡米し、ほうぼうのレコード会社を回ります。
 しかし完全なる門前払い。話だけは聴いてくれたEMIにも、「時代遅れすぎて売れない」とまで言われてしまいます。
 「こんなにもいい音楽なのになぜなんだ?」と切れた彼らは、ついに自家プレスに及び、手売りを覚悟するのでした。
 ところが海の向こうに救いの神が。
 アルバムを聴き、興味を持った日本のプロモーターが「ラウドパーク」というロックイベントにアンヴィルを招待してくれたのです。
 そして「This is Thirteen」は、日本ではソニーミュージックからメジャーリリースされることになりました。
 アンヴィルはスーパーロック以来に日本の地を踏みました。
 演奏順としてはキャリアにふさわしくない前座扱いでしたが、幕張メッセに詰めかけた二千人のファンの前で熱演を繰り広げたのでした。
 それはあたかも八十四年の再現のよう。熱い余韻ののこるラストでした。
 
 アンヴィルがこの映画によって、再びスターダムに舞い戻れるのか、それとも元の生活に帰っていくのか、わたしには分かりません。
 でも夢を追い続けることの素晴らしさと厳しさを誰の心にも刻み付けたに違いありません。
 わたしにとっては激励のような映画でした。思ってもみなかったようないい内容でした。
 映画、たまには観てみるのも良いものですね。
 
 画像は映画の内容とはまったく関係ない、映画館の近くの風景です。

日本パソコン旅日記

 パソコンを使った旅の情報収集法や、記録のまとめ方などを紹介した本です。しかし、あまりパソコンとは関係のない紀行文が大部分を占めています。
 初版は十年以上前の97年。そのためインターネットにはあまり触れられておらず、「駅すぱあと」とか、「ニフティサーブ」などという郷愁を誘う言葉が頻出します。
 内容は完全に陳腐化しているでしょう。今は旅先から携帯でブログを更新できる時代ですから。いま出すなら「日本ウェブ旅日記」でしょうね。
 しかし、それを分かっていながらこの本に手を出したのは、十年前と今とで何が大きく変わり、逆に何があまり変化していないのかに興味があったからです。
 
 画像や動画といったコンテンツ自体はそう大きく変わっていないような気がします。たぶん(クオリティは別として)今でも普通に見られるでしょう。
 ただ、パソコンの中で使うパッケージソフトがどうしようもなく古い。いかに有益な情報だとしても、特定のソフトに依存してしまうようなデータは一顧だにされないでしょうね。
 そう考えると、特定のOSだとかブラウザに依存しないインターネットの世界は簡単には陳腐化しない気がします。
 
 逆に大きく変わりそうなのが、ハードの方です。
 十年後にはパソコンに代わって、携帯電話や、PSPやDSのような携帯ゲーム機がインターネットを利用するメインの機器になると思います。
 利用とは閲覧するばかりではなく、記事を投稿したり、保守をしたりすることも含まれます。
 でも親指だけで操作する携帯も難儀ですが、十字キーと数個のボタンしかないゲーム機でどうやってそれをするんでしょうかね?
 おそらくATOKを更に発展させたような強力な入力支援ソフトが作られるようになるのでしょうね。そしてサイト側にもそれを支援する仕組みが求められそうです。
 モバイルを意識することがウェブサイトの陳腐化を防ぐことにつながるのではないかと思いました。

サイト改装

 このごろあまり更新していませんが、実は裏でサイト改装の準備を進めているのです。
 その途中経過の画面をキャプチャしたものを、こっそり公開いたします。
 来週末くらいまでにはアップできたらと考えています。

黒い仏

 これはひどい。
 
 ひどすぎて思わず表紙を撮るのを忘れてしまいました。
 これはミステリーなのかと首をひねりたくなってしまう作品です。
 
 わたしが殊能将之の作品で最初に手に取ったのは、例によって「ハサミ男」なのですが、いっぺんにファンになってしまいました。
 その魅力はトリックよりもむしろ文章そのものにありました。
 どんなキチガイじみたことでも淡々した語り口を崩さない。磁器のような冷たさと滑らかさを併せ持つ文章だったのです。
 
 しかし、今回の漫画チックな展開ときたらどうでしょう。文章もそれに引きずられて、恐怖よりもむしろ笑いを誘います。
 そんなアイディア一発の作品よりも、緻密なものを期待しているのですが、無駄なのでしょうか?

ジョギング

 今日はひさしぶりにジョギングしてきました。
 引っ越して以来中断していたのですが、このままではいけないと思い立ったのです。
 この寒さはちょっと予想外でしたが、空は澄んだ秋晴れで、いい日和でした。
 ルートは家から庄内川までを往復というもの。堤からの河川敷の眺めはのどかでした。
 ただ、とちゅう往来のおおい商店街を通らなければならないのが結構ストレスでした。
 もっと良いルートはないものか……。