北村薫の「秋の花」の中に、主人公たちが「野菊の墓」談義に花を咲かせる場面があります。
そこで興味をそそられて手に取りました。
短い話なので、すぐに読めました。
とても悲しいお話でした。
民子が哀れということもあるのですが、政夫の母の後悔の涙に咽ぶ姿にも心を動かされずにはいられません。
電車の中で読んでいたのですが、思わず涙ぐんでしまったほどです。
しかし、これほどまでに感動的な話を正ちゃんは「自己中心的な作品」と切り捨てます。
かっ…かっこいいッ!
確かにそういう目で見れば、妙に悟ったような文章に違和感を感じなくもありません。
民さんほど彼女を想ってなかったんじゃないかとすら思えます。
月日の経過が物事を客観的に見せてくれるようになったのかも知れませんが。
そんな嫌らしさが端的に表れたのが、正ちゃん御立腹の結びの一文だと思います。